第50回ちばてつや賞一般部門選考結果発表!!
第50回 ちばてつや賞一般部門 実録2次選考会!!
以下は編集部内で行われた作品の概要と第2次選考会の模様です。2次選考では、第1次選考を通 過した25本の作品について、事務局メンバーを中心に、編集部員が参加しての議論が交わされました。
1「エガクヒト」高島正嗣(たかしま まさつぐ)(東京・27歳)
<あらすじ>
美大に通う女の子・高円寺有紀は、彼女が目標とするクラスメイト・町田と一緒に海外のコンクールへの出品を推薦される。高円寺がプレッシャーを振り切り、出品作を仕上げるまでの物語。

編集部員・A
「画力はもちろん、やる気、根性など漫画家として必要な才能の高さを感じますよね。」

編集部員・B
「隅々までしっかり描きこんでますもんね。それ何といっても顔の表情が素晴らしい!」

編集長・古川
「うん。主人公の女の子、いい顔して笑うよな。絵は応募作のなかでもトップレベル! ただ内容が、エンターテインメント性より、先に自分で決めたテーマに縛られちゃってる印象がある。肩の力抜いてのびのびとやれば必ず伸びる人だね。」

2「ブスにかわいいというと一生つきまとわれる」N.S(30歳・東京)
<あらすじ>
ブサイクな女の子に「かわいい」と冗談で言ってしまったがために始まる男の不幸。

編集部員・D
「盲目的に好きな人を追いかけてしまう気持ちが、一歩ひいてみるとすごく怖いものなのかもしれないというところが描かれていて、すごく共感しちゃいました。」

編集部員・C
「そう! 本当に怖かったです。」

事務局長・鯉渕
「この内容の怖さに画力がついてきたらすごくなりそう。特にキャラクターが強くかけられれば文句なし。」

編集部員・C
「そうなんですよね。絵はまだまだ伸びしろがありそう! 不快になりがちな場面も、ギリギリのラインでセーフの位置を留められる器用さがありますからね。」

編集長・古川
「うん、その器用さが一番の武器だな。あとは器用貧乏にならないように、力技でもいいからキャラを強めていってほしい。」

3「乳牛物語」水木麻紀子(24歳・東京)
<あらすじ>
乳をしぼられるために存在する雌牛(作品内では人間の姿で描かれている)の悩みは絶えない。存在意義、娘のこと、息子のこと……。逃げ場のない小屋の中で、雌牛は今日も種付けをされ、乳を絞られるために生きている。

事務局長・鯉渕
「編集部ではかなりの高評価でした。」

編集部員・E
「やっぱオリジナリティが際立っていたからですかね。今回の作品の中で、単行本で出てたら買うかもしれないほど個人的に大好きでした。」

編集部員・D
「線がすごく綺麗だから、色んな絵が描けそう。」

編集部員・F
「まさかこういうのしか描けないわけじゃないよな(笑)。ほかのテーマの作品も見てみたいと思わせる魅力がある。」

編集長・古川
「確かに才能はあるな。ありえないような構図を描いているのに、読者がすっと世界に入っていける絵に出来ているんだよな。」

編集部員・F
「その構成力の高さがあるからなんでしょうけど、物語を通じてこれだけ一貫した世界観が描けるというのは、すごい才能。読むと牛が食べづらくなるけど(笑)」

4「ボタン」橋本日新(26歳・東京)
<あらすじ>
死刑執行人を国民からランダムに選ぶことが制度化されている世界。選ばれてしまった男性の心の葛藤を描く。

編集部員・A
「着眼点・テーマが面白くて、かなり興味をそそられました!」

編集長・古川
「うん。こういう切り口の話は今までなかったよな。ただ執行人に選ばれてからの工夫がもうちょっとあればもっと良かった。」

編集部員・B
「演出にももう少しひねりがあるとぐんといい方に変わりそうですよね。」

編集部員・A
「発想力があるから、あとは見せ方次第でどんどん伸びていけるってことですね。」

事務局長・鯉渕
「そうだね。ちょっと見せ場に悩んでいる感じはあったかなあ。」

編集長・古川
「とにかく色々話を描いて、編集部に持って来ることが一番だな。」

5「TWIN」松浦淳子(20歳・東京)
<あらすじ>
ある老人によって作られ、育てられたロボット2体のロボット。自分は世界一有能だと信じる1体は、能力の劣るはずのもう1体が老人から寵愛を受けていることが気に食わなくて……。

事務局長・鯉渕
「子供のロボットの話は落ちた作品の中にも多かったんだよな」

編集部員・C
「なのに、その中でこの作品が目立ったのは、やっぱり2人のロボットの対比に読みごたえがあったからですよね。」

編集部員・D
「そう! これがもし人間の子供同士の話だったら……。考えるのも怖い! 嫉妬が怖いのは人間だけじゃない(笑)」

編集長・古川
「あと絵も独特だったな。女性の作者らしく、繊細でやわらかいタッチがいい雰囲気を出してたね。欲を言えば背景や、人物の表情をもう少し丁寧に描いてほしかったかな。」

6「Dogs」高橋裕之(30歳・東京)
<あらすじ>
スラム街の最下層で、やくざの使い回しとして生きる“やっちゃん”と“ユキオ”。裏切られ、捨て駒にされた2人は自分の存在価値を見出すために組織の思惑を打ち砕く。

編集部員・K
「この方よく応募してくださいますよね。絵が本当に独特!」

編集部員・G
「雰囲気がすごくあるんですよ。だから絵柄とか覚えちゃってますよね。」

事務局長・鯉渕
「ただアクが強すぎて逆にとっつきにくい表現がところどころあるのは、少し残念だったね。」

編集長・古川
「うん。特徴ある絵だから、ストーリーにもう少し笑える場面とか、ライトなシーンがあったら、更に入りやすく読みやすくなっただろうな。」

7「ONE」イイヅカケイタ(21歳・東京)
<あらすじ>
突然決定された高性能ロボットの廃止。人間の子供として育てられた子供型ロボット・ホロにも回収の手が伸びる。自分が人間じゃなかったという悲しい運命と闘うため、ホロはロボット開発の権威・カルマン博士を探す旅に出る。

事務局長・鯉渕
「線が独特で、アメコミ風の絵を描く人だよね。」

編集部員・G
「そうなんですよ! 線がとても綺麗で絵がもっとうまくなる雰囲気がある。子供と大人の描き分けもしっかり出来ていますしね。」

編集長・古川
「そうだな。これから伸びていく気配がある。惜しいのはまだ絵に感情が載せきれてないこと。SFには熱烈なファンが多いから、そういったファンを唸らせるぐらいに、どんどんリアルな表現を追及してほしいね。」

8「エレベーション」真菰ゆりお(大阪・27歳)
<あらすじ>
とあるデパートのエレベーターガールは、「8階へ上って地下2階に降りるばかりの 暮らし」に嫌気がさし、アメリカに留学することに。そこへ、元カレが乗り込んできて……。

編集部員・B
「部分、部分のネームのひらめきが抜群! ネタを詰め込むことがうまくて、今回はそれが見事にはまってますよね。」

編集部員・M
「よかったです(笑)。僕が担当なんですけど、始めはギャグ漫画としてスタートしたわけじゃないんです。描いているうちに浮かんできたネタを詰め込んでいったら、コメディの要素が強くなったんですよね。」

編集長・古川
「確かにギャグセンスがある。これはシリアスな話を描くにしても必ず今後の武器になるはず。ただ、断ち切りなどのマンガの基本をもっと勉強したほうがいいと思ったな。」

編集部員・M
「すみません(笑)。」

9「鬼憑の剣」鈴木智(京都・22歳)
<あらすじ>
徳川三代将軍の治世。青年剣士は親しき者たちの復讐に燃える。憎しみの業火によって鬼と変じ、若い生命がむしば蝕まれてゆく。彼を救うのは、同じ心の傷を持つ少女との愛であった。

編集部員・B
「ほとんど初めての作品でこれほどの分量と質。根性もすごいし、なによりやる気が技術の向上を引っ張ってる。すごくいい傾向ですよね。」

編集部員・H
「ほんと漫画家向きですよね。さすがに初めは長いなとは思うんですけど、でも読めちゃうんですよね!」

編集部員・A
「ページ進むたびに絵がうまくなりますしね。間違いなくまだまだうまくなる!」

編集部員・F
「宗教的な要素も強く感じるし、この人(作者)は宗教家なんじゃないかなんて思うくらい。」

編集長・古川
「でもやっぱ長いよな(笑)」

10「今輝いてシャイニング」邉見友和(千葉・32歳)
<あらすじ>
タピオカにクラブハウス。恥ずかしい通り名を持つ二人が、世間の仕組みと真っ向闘う、平成プロレタリアート漫画。

編集部員・J
「今回、夢を目指す漫画のなかで一番面白かった。」

編集部員・T
「はまると病み付きになるんですよね。逆にはまらないと最後まで笑えない(笑)。ギャグ漫画ってそうゆうものだから、この作品はギャグ漫画として正しい形をしてる。」

編集部員・A
「そうそう、僕はネームでやられました。すごい切れ味(笑)。」

編集部員・J
「それにタイトルもすばらしいんですよ。」

事務局長・鯉渕
「ほんとに笑った。笑いなら笑いにガンガン突っ走って欲しい。」

11「HOPE」斗米寅子 (東京・27歳)
<あらすじ>
姉への強い恋心をぬぐえないままの主人公・昴のもとに姉の元恋人を名乗る女性が現れる。

編集部員・F
「すごく大人な話なんですよ(笑)。」

編集部員・G
「確かにアダルトな雰囲気なんだけど、絵が柔らかいから読みやすいですよね。それに、主人公2人の心情がすごく印象的に描けていたと思います。」

編集部員・L
「そうそう、いい意味で軽い絵を描く人だから、重いテーマでも世界に入っていけたんですよね。」

事務局長・鯉渕
「うん。暗くならないような努力がしっかりされているね。ただそもそもがわかりにくい世界なだけに、もう少し感情移入できる遊びの部分がほしかった。」

12「そりゃないよ丸山さん」福田りえ(31歳・栃木)
<あらすじ>
洋介は丸山さんにごく普通の恋心を寄せ、ごく普通に妄想し、ごく普通にストークする。ついに丸山さんのバイト先を知った洋介は悩み傷つき決意し告白するが……。せつなさ全開青春ストーリー。

編集長・古川
「俺これにははまった(笑)。大笑いしたな。」

編集部員・B
「何ともいえないとぼけた笑いがうまいですよね! それに線が綺麗で、独特な感じがある。」

編集長・古川
「そう、最初にこの世界観にはまるとかなり楽しく読める。演出力もなかなかだし、才能を感じるんだよな。」

編集部員・F
「いろいろと対応できる力がありそうなんですよね。他の要素を織り込む余裕も感じられるし。」

編集部員・E
「ただ強いて言えば、丸山さんのSM嬢姿の絵がステレオタイプな感じがしてちょっと残念でした。一番大事な場面だから自分だけの表現をもっと追求して欲しかったです。」

13「鋼の月」イシバシタクヤ(30歳・東京)
<あらすじ>
田舎の旅館宿に家族旅行に訪れた少年が主人公。宿場劇の役者として花形を飾る少女に淡い恋心を抱き……。

編集部員・M
「少女が、少年と別れるシーンで「ファサ」って着物を脱ぐ姿にやられました。」

編集部員・L
「私は前半部分。少年が少女と出会って心惹かれていくまでの過程がよく描けてたんですよね。」

編集長・古川
「そうそう、心理表現も豊かだし、絵もせりふまわしも独特でオリジナリティがあるんだよ。ただ苦言を呈すると、最後で話が破綻する場面が多いんだよな。」

編集部員・M
「でもキャラ設定は感情移入できて魅力的ですよ。」

編集部員・B
「女の子の心情とかうまいよね。アナクロな世界を器用に描けていたね。」

14「浅草ケンカ堂へようこそ!」二代目亜寳よりましか(東京・30歳)
<あらすじ>
カリスマモデル・楢崎にあこがれ、「俺流」のおしゃれスタイルを模索している花園仁。浅草でヤンキー御用達の洋品店「浅草ケンカ堂」を営む親父とは、いつもぶつかってばかりで……。

編集部員・F
「すごい面白かったと思いますよ。このまま本誌に即掲載とまではいかないにしろ、ストーリーの盛り上げ方とかがしっかりしてましたね」

編集部員・K
「浅草の人の怒りを買いそうな気もするけど(笑)」

編集長・古川
「でも、ちゃんと笑えたよね。キャラクターがよく描かれてたせいだね」

編集部員・F
「主人公も良かったけど、オヤジや子分といったサブキャラが印象的でしたね。憧れのカリスマモデルが、最後は子分になっちゃうという展開も、読後感を一層良くしてました」

事務局長・鯉渕
「実際にこういうお店あったりしそうですよね」

編集部員・F
「いや、絶対ありますよ!」

編集部員・B
「この作者が浅草の人みたいですね」

事務局長・鯉渕
「それで、ディティールがしっかりしていて、雰囲気がよくまとまってたのかもしませんね」

15「Too LATE To DIE」小村良郎(埼玉・33歳)
<あらすじ>
老人ホームに入居している「ワシ」は、次々にけていく仲間たちの姿に恐ろしさを覚えている。次は自分かもしれない。そんな中、仲間のひとりシゲさんが、いつか故郷の桜を見に行くことを夢見ているのを知る。ワシはシゲさんのために一計を案じる。

事務局長・鯉渕
「老人ホームを舞台にした“青春物語”ですね。盗んだバイクで桜を見に行くっていう」

編集部員・G
「お爺さんの漫画が僕は好きなんですよね〜。桜を見に行くシーンの直前の『ニヤリ』と笑う表情に、心動かされましたね。目も小さくて、決して派手な顔じゃないのに、ちょっとした口元の動きだけで、ここまで表情を描けてしまう点に感動しました」

編編集部員・N
「キャラの造形や、コマ割りに本当に無駄がないですよね」

編集部員・F
「背中の哀愁とかもよく描かれてましたよね」

事務局長・鯉渕
「うん。絵の巧さがごく自然に伝わってくる作品ですね。コミカルなシーンとかも不自然な感じがしなくて、それで読後感がとってもいい」

16「くちびる」岳里(大阪・27歳)
<あらすじ>
どうしてもキスがしたくてたまらない主人公は、ある夜偶然入った路地裏の壁に、桃色の美しい唇があるのを発見する。

事務局長・鯉渕
「これは編集部員の評価も分かれましたね。好きな人は好きだけど、苦手な人は苦手っていう」

編集長・古川
「ストーリーの奇妙さや怖さよりも、気持ち悪さだけが突出してる印象があったのが残念かな」

編集部員・M
「確かにそうですね。壁に唇があるっていう発想は、シュールで面白いですけどね。あと、ラストの黒猫が塀にいる絵が印象的でした」

編集部員・I
「うん。その面白さを生かすなら、主人公をそこまで現実離れしたキャラクターにしなくても良かったと思う。全く別の展開で、もっと奇妙なストーリーだったり、笑えるストーリにもできたんじゃないかな」

17「ハチミツトリップ」山本一宏(埼玉・35歳)
<あらすじ>
田舎で養蜂場を営む一家の主は、突如現れた熊に襲われ、首を折ってしまう。一生、 首は治らないと、医師に宣告された主は自殺を考えるのだった。3年後、捕獲所から逃げ出した熊が、主の妻の霧さんの前に現れ……。

編集部員・B
「これは面白かったですね。キャラクターに何ともいえない味があって。お母さんに迫力がありましたね」

事務局長・鯉渕
「うん。特に、お母さんの登場の仕方が良かった!」

編集部員・A
「警官連れてドーンと出てくるところですね」

編集部員・B
「絵は仕上げてないような感じがしたけど」

事務局長・鯉渕
「ただそれも、このストーリーには合ってるような気がしたかな」

編集長・古川
「うん。絵は巧いと思った。確かに仕上げはできてないけど、デッサンは相当きちっとしてる」

編集部員・A
「キャラに存在感がありますよね。目はちょっと表情が出しにくい感じがしましたけど、それでよくそこまでっていう」

編集長・古川
「今のスタイルに固執しなければ、どんどん巧くなりそうだよね」

事務局長・鯉
「ストーリーの核がなかったっていうのもちょっと残念だね。『これはこういう話だ』っていうのがあればもっと良かったよね」

18「反射」国枝薫平(東京・30歳)
<あらすじ>
空。

編集部員・A
「僕はすごくセンスを感じました。ちゃんと人物を描こうとしているのが伝わってきたし、とても面白く読むことができました」

編集部員・H
「トビラの絵も良かったですよね」

編集長・古川
「ただ、ストーリー全体で『これが見せたいんだ』というものがあまり感じられなかった気がするな」

編集部員・A
「確かに、ストーリーで特に伝えたいことがあるって感じじゃないですよね。それより、シーンごとの個別の面白さを描いてみたかったんだな、と思いました」

編集部員・O
「なかなか評価が難しい作品だよね」

編集部員・A
「ものすごい好きな人がいてもおかしくないし、全然わからないやっていう人がいてもおかしくない作品ですよね」

19「0.42195 帰路」うえはらもとむ(東京・26歳)
<あらすじ>
負けず嫌いの亜希子は、自分と同じ帰り道の見知らぬおじさんに、歩く早さで負けることがどうしても許せない。そのため、日夜トレーニングに励むが……。

事務局長・鯉渕
「主人公の女性が、帰り道におじさんと早歩きの勝負をするっていうやつですね」

編集長・古川
「よくまとまってると思うし、笑えるところはしっかり笑える」

編集部員・O
「ただ、少し物足りない気がしました」

編集長・古川
「そうだね。絵やストーリーや展開やキャラクターの中に、強い個性があるかっていうと、そうじゃない。それは残念だったね」

編集部員・B
「きれいにまとめすぎてるんですかね。本誌に載っていたとしてもおかしくない気がするけど、ちょっと印象が弱いなっていう」

編集長・古川
「漫画を描く技量は十分あるんだろうね。ここからもう一歩進めるかどうかが大事だな」

事務局長・鯉渕
「ストーリーはいい話で、ちゃんと読めましたし、そこはみんなの評価も一致してますからね。さらなる成長に期待ですね」

20「過ぎ去りし友・他1」 T・K(広島・20歳)
<あらすじ>
寿命が迫っているセミは、死ぬ前にどうしても人助けがしたかった。そんなとき、ちょうどよく(?)虫かごに捕らえられたトンボを見つける。

事務局長・鯉渕
「忍者がぞろぞろっと出てきて、捕まって、『ここでできるのは座談会くらいだな』っていうギャグは笑いました」

編集部員・L
「緩さや間とかがちょうど良くて、つい笑っちゃいましたよね」

編集部員・C
「作者は20歳の人なんですよね。そのわりには渋い作品描くなあと思いました」

編集部員・L
「ただ、ちょっと短すぎる気もしましたね」

編集長・古川
「そのせいで、評価もけっこう分かれてるね。そのちょっとの間に笑えたか、笑えなかったかっていう差がはっきり出たんだな」

編集部員・M
「僕は笑えなかった方です」

事務局長・鯉渕
「全体的に見ると、笑えなかった人の方が多くなってしまったかな……。ページ数が少ない分、笑わせるポイントも少ないからね」

編集部員・D
「確かに、ピンポイントに笑わせるって感じでしたよね。私はそれにすごくはまりましたけど」

事務局長・鯉渕
「ただ、もう一押しが足らない感じもありましたね。“クスリ”っていう程度より、もっと大きな笑いどころが欲しかった気もします」

21「クロール」三原和人(東京・26歳)
<あらすじ>
競泳用プールでクロールをしているスキンヘッドの男と、その姿をプールサイドから見つめる無口な少年。茶化されプールの中に落とされた無口な少年は、無言でスキンヘッドを対決に誘う。水泳で会話する2人の男を、最少のせりふと絵だけで表現した異色作。

編集部員・A
「ものすごいセンスがある人だなと思いましたね。すごくシンプルな絵なのに、しっかり水泳の動きや感覚が伝わってくる」

編集長・古川
「確かに、センスは感じるね。一つ一つの絵はすごく巧い」

編集部員・P
「表情もすごくいい」

編集部員・G
「空の絵とか、簡潔すぎるくらいシンプルなんだけど、しっかり味が出てますよね。水中のターンの絵も、動きを感じてすごく綺麗でした」

編集長・古川
「ただちょっと“雰囲気”だけに流されてる気がする。シュールにいくのか、ギャグに持っていくのか、もう少し作品の方向性を強く打ち出した方がいいと思うな」

編集部員・A
「ちょっとクールすぎるのかもしれないですね」

編集部員・O
「もっと前に出る感じというか、“これが伝えたい”という熱量みたいなのがあるといいな、と思いました」

事務局長・鯉渕
「才能の埋蔵量をまだ見せ切れてない感じですね。もっと描けるはずだと思います。“どうしても世の中に出るんだ”という思いを、作品にもっとぶつけてほしいですね」

22「菊田家と金魚物語」GREEN BOY(広島・21歳)
<あらすじ>
長兄・恵太の独り暮らしを巡り菊田家は最近険悪ムード。弟の章人は、以前の仲良し家族に戻ることを祈り、飼っている金魚に家族の名前をつける。そして「広い世界に旅立ちたい」と願う大好きな恵太のために、章人は兄ちゃん金魚を海へ放そうと家を飛び出す。

事務局長・鯉渕
「これは泣けましたね! そういう意味では、ここ数回のちば賞の応募作品の中でダントツに良かった作品だと思います」

編集部員・K
「僕も、泣きました。頑張ってるんだけど、金魚を海に入れちゃう子ども。本当に切ないですよね」

編集長・古川
「MANGA OPENでも賞をとった人だよね。前回よりも、さらに物語の構成力や絵の技術力が上がってるね」

編集部員・E
「前は前で、荒削りだけど勢いがあって良かったですけどね」

編集部員・O
「そうですね。ちょっと構成がうまくまとまりすぎていて、物語の勢いが落ち着いちゃった気がしました」

編集部員・A
「ただ、“登場人物が全員いい人”っていう難しい設定を、よくここまでまとめられたな、とも思います。あとは、人物の顔がもう少し丁寧に描いてあれば、もっと良かったかな。特に眼ですね。そこがしっかりしてたら、さらにいい表情が出せたと思います」

事務局長・鯉渕
「そうだね。登場人物の印象がより強くなって、さらに泣ける作品に仕上がっただろうね」

23「タマキムチ」金正賢(京都・21歳)
<あらすじ>
国を飛び出し、日本で留学生活を送るキムは、路上で歌うタマキと出会う。キムのテクニックにれ込み、コンビ結成を持ちかけるタマキをキムは頑なに拒む。彼の胸には厳格な音楽家である父へのコンプレックスと、音楽への熱い愛情が隠されていた……。

編集長・古川
「登場人物が抱えてるバックグラウンドとか、そういうキャラクター設定がまだまだ詰められてない感じはしたけど、女の子の気持ちの描写がすごく丁寧で、読んでて自然に感情移入できた。そういう才能はかなりあるんじゃないかな。主人公二人の関係を、しっかり、一生懸命に描こうという姿勢が伝わってきた」

事務局長・鯉渕
「そうですね。ともすれば、ただのはすっぱな女の子に受け取られかねないけど、そこをすごくかわいく見せられてる。絵も上手ですね」

編集長・古川
「うん。構成や展開とかは、まだまだ良くできるとは思うけどね」

編集部員・L
「コマ割りや、セリフの位置は、ちょっと読みづらいところが多かった気がします。せっかくの絵を邪魔しちゃってるというか」

編集部員・M
「そうですね。ストーリーが良かっただけに、そういう欠点も目立ちましたね」

事務局長・鯉渕
「ただ“伝えたい”っていう熱意をすごく感じた。この人は、まだまだ才能を伸ばしていくんじゃないかな」

24「永眠症〜おやぢの見る夢〜」希代あみ(埼玉・19歳)
<あらすじ>
原因不明で眠り続け、そのうちに死に至るという「永眠症」にかかってしまった主人公は、夢の中で初恋の人に再会する。

事務局長・鯉渕
「アイデア自体は面白いと思いました。ただ、構成が甘くて、どのシーンが夢で、どのシーンが現実なのか、いまいちよくわからなかったのが残念ですね」

編集長・古川
「まあ、まだ描いた作品数が少ないんだろうね。作者は19歳か。これからどんどん巧くなっていくんじゃないかな」

編集部員・A
「オヤジの顔が全然オヤジに見えなかったんですよね」

編集部員・C
「そこで読めなくなっちゃう人もいそうですよね。ちょっともったいない」

事務局長・鯉渕
「そうだね。でも、女子高生の表情は巧かったな」

編集部員・J
「あと、作品全体に勢いがありましたよね。何か、作者のガッツのようなものを感じた気がしました」

事務局長・鯉渕
「うんうん。ガッツがある感じはした。次にどんな作品を描いてくるか、すごく楽しみですね。期待してます」

25「動物の町」田中六大(東京・26歳)
<あらすじ>
都内中央線沿線にある動物の町は無法地帯である。やけに冷静なたぬき、メタルバンドをやりたいのに唯一できる楽器がリコーダーの羊などが好き勝手に暮らしている。でもみんな基本的に常識をわきまえているので、毎日が平和な動物の町なのであった。

編集部員・O
「これはキャラクターをかわいいと思えたかどうかで、ずいぶん評価が分かれそうですよね」

事務局長・鯉渕
「そうだね。どう、かわいかった?」

編集部員・K
「いやあ、めちゃくちゃかわいいと思いましたよ。即連載してもおかしくないと思いました」

編集部員・H
「僕は、そこまで思えませんでしたね。ただ、ギャグは笑いました」

編集部員・O
「リコーダーのシーンとか、すごく良かったですよね」

編集部員・D
「そのシーン、私もすごく好きでした!」

編集部員・O
「この人は、前回のMANGA OPENでも応募してますけど、そこから絵もかなり巧くなってます。クセはありますけど、センスは抜群だと思いますよ」

編集部員・A
「こういう、ちょっとブラックだけどのどかっていう雰囲気は、狙いすぎで嫌な感じになりやすいけど、かなり自然でしたよね」

編集部員・D
「実生活で会ったら嫌だな、っていうキャラクターさえ、かわいく見えましたもんね(笑)」