1番 「ビューティフル・ライフ」 ヤマザキ法人 (東京・43歳)
<あらすじ>
ヤクザの緒方は、麻薬中毒の義理の兄が起こしたトラブルの責任を組から取らされ、銀行強盗をするはめになる……。
寸 評
人物や背景の描き込み方が丁寧で、大胆な設定の物語にうまくリアルな雰囲気を持たせていたと思う。コマ割りも見やすく、中盤以降の展開も結構ドキドキさせられた。ただセリフがやや多くてわかりにくかったこと、主人公の心の動きが少なく感情移入しにくかったことが残念だった。
2番 「lynceus(リュンケウス)」 芹沢リュウセンケイ (静岡・35歳)
<あらすじ>成仏できなかった霊が見える――。そんな特殊能力を持つ近藤は、ある日突然、謎の黒服集団に襲われる。
寸 評
主人公の女性が路上やマンションで黒服集団に襲われたり、邪悪な地縛霊たちと戦ったりするといった複雑なシーンが、決して逃げずに正面から描かれていて、とても勢いを感じた。ただ複雑なコマ割りや、量の多いセリフをシンプルにしていくと、さらに読みやすいと思う。
4番 「サラリーまんが2006」 ギョタロー (大阪・59歳)
<あらすじ>様々な時代の一風変わった"サラリーマン"たちが織りなす、ショート・ショート・ギャグ。
寸 評
原始時代(?)のサラリーマンや、事故にあって狂気的になったサラリーマンなど、ユニークなキャラが多く登場し、賑やかで楽しい雰囲気が出ている。絵ものびのびしたタッチで見やすかった。一篇が短いので、やや感情移入はしにくかった。
5番 「猫地蔵」 F・A (秋田・45歳)
<あらすじ>ある学校には、願いを叶えてくれると信じられているお地蔵様があった。しかし新任の校長がそれを取り壊そうとし……。
寸 評
屋上のお地蔵様、その周りをうろつく神秘的な白い猫、そして猫を世話する主人公という、独特で不思議な雰囲気のある設定に、期待感が煽られた。コマ割りが大きく読みやすかったが、展開はややシンプルすぎた気がした。新任の校長が出てきてからラストまでに、ひとひねり欲しかった。
6番 「SUSUKINO-TACTICS(ススキノ・タクティクス)」松中鏡月 (北海道・30歳)
<あらすじ>ススキノのキャバクラ「フロイド」から、やり手の彩音がライバル店に引き抜かれ、店同士の巧みな騙し合いが始まった!
寸 評
一見真面目な部下、キレやすい店長、大人しいが腹に一物ありそうな部長と、それぞれのキャラクターはよく伝わってきた。キャバクラ店同士の攻防というネタも、キャッチーで興味をひかれた。展開や情報をもっと盛り込むと、より良かったと思う。
7番 「WALK ON!」 Y・D(北海道・48歳)
<あらすじ>ブルース・リーに憧れて、フルコンタクト空手に魅せられた男たちの自伝的青春活劇。
寸 評
特にずば抜けた才能があるわけでもない主人公に、古さを感じさせるブルース・リーのネタと、ややとっつきにくい点はあるものの、物語が堅実に丁寧に描かれているため、結構感情移入して読むことができた。主人公の過去の物語だけでなく、これからの話も見てみたい。
10番 「飛ぶ老人」 I・I(埼玉・40歳)
<あらすじ>小さな本屋に置かれた古びた本。その中には空を飛ぶ老人が棲んでいた。ある日、一人の少年がその本を手にとって……。
寸 評
ごくごく短いページながら、空を飛ぶ老人と、創造力豊かな少年との心の交流がきっちりと描かれていて、爽やかかつほのぼのとした読後感があった。コマ割りや構図もシンプルながら大胆で良かった。ただ(意図的かもしれないが)絵柄がやや古く、とっつきにくかった点が惜しかった。
11番 「ひつま武士 他1作品」 大和利行(福岡・41歳)
<あらすじ>浪人とその子供が繰り広げるドタバタ四コマ漫画。
寸 評
四コマながらも、20Pというボリュームのおかげで、比較的作品世界に入り込みやすかった。ただ、だからこそ、それぞれのキャラクターにはっきりとした個性を出してほしかった。シュールなものにするか、ドタバタを前面に出すのか、明確にするとより良かった。
15番 「3月24日の奇跡」 江畑ゆきのり (千葉)
<あらすじ>大学を卒業し、田舎へ帰るために電車に乗り込もうとした女性が目にしたのは、今は亡き父と共に初めて東京へやって来た4年前の自分の姿だった。
寸 評
以前のちば賞で入賞していることをふまえ、あえて厳しく評価させてもらった。作品の構成力、技術ともに一定のレベルには到達していると思う。一方で主人公が過去の自分と出逢う必然性や、亡き父の姿を目にしたことで彼女自身がどう変化し、成長していくかが描ききれていない。読者の心に踏み込みたいという欲求よりも、作品としてどうまとめるかに気を取られているように感じてしまったのが残念。
16番 「らんちゃんの害虫事件記」 Y・A(埼玉・30歳)
<あらすじ>配膳係として働くらんは害虫駆除に異常なまでに情熱を燃やしている。そんな彼女の部屋に一匹のゴキブリが忍び込む…。
寸 評
主人公の天真爛漫なキャラクターは魅力的だった。ただ、虫退治だけで一話読むのは厳しい。虫と人間の闘いを描くドタバタ物として読むにはテンポ感が足りない。虫もあんなコミカルに描かれては、嫌われもの、敵役としては物足りない。むしろ主人公のキャラクターを活かして別の物語にしたほうが良かったと思う。
19番 「剣豪なり」 乾良平(東京・52歳)
<あらすじ>老いた剣豪・宮本武蔵。格安の報酬で肥後藩に仕える彼の心境とは……。
寸 評
個性的な絵柄は好みがわかれるところ。語り手、ライバル、そして武蔵。これらのキャラクターの描き分けをもっとはっきりとしてほしい。ラストシーンで説明される、老いてますます凄みを増す武蔵の姿は、ぜひ絵で描いてほしかった。また、平和な日常では暮らしていけない武蔵をあえて任官した忠利という人間をもっと描けば、もっと深みのある物語になったのではないかと思う。
20番 「あびしにあん」 高篠ないき(東京・41歳)
<あらすじ>お気楽な大学生・明彦とアビシニアン・茶太郎。一人と猫一匹の心の交流を描く。
寸 評
猫の漫画を描くのであれば、まず猫をもっとよく観察してほしい。 猫種ごとの容姿や性格の違い、猫という生き物のどこが魅力的なのか。それが自然と伝わる、作者の猫に対する愛情にあふれた作品が読みたかった。また、当たり前のように猫と人間が会話しているのには、最後まで抵抗があった。ファンタジーならファンタジーであると、どこかではっきり説明しても良かったと思う。
22番 「滝で河童は」 N・M(鹿児島・46歳)
<あらすじ>ほのぼのとしたイラストとコメントによる一コマ漫画。
寸 評
イラストに描いてある状況を文字にしているだけでは、漫画としては成立しない。読み手に「分かる分かる」と頷いてもらう風刺を利かせたり、その一コマからイラスト以外に読み取ってもらいたい要素を台詞にした方がいいと思う。イラストは可愛くコミカルなのだから、その部分を最大限に生かした次回作に期待します。
24番 「スマイル・フォー・ユー」 N・T(北海道・52歳)
<あらすじ>家出をして農場で働いて暮らす青年は、父の一周忌に実家に帰ることを迷っていた。そこに実の妹が訪れる……。
寸 評
まず台詞が多く、読みにくかった。客観的な視点で、もっと整理することが必要だと思う。また前半部分で主人公に感情移入できるだけのエピソードがなく、後半で母親を憎んでいるシーンが活きてこなかった。ヤクザが出てくるシーンは心に響くものがあったので、そこを中心に作品を仕上げてみても良かったのではと感じた。
25番 「避雷針」 H・A (高知・35歳)
<あらすじ>神からの使者が人間界に現れる、その名も"避雷神"!
寸 評
最後のコマを読んで納得、「つまりこのコマを描きたかったのだ」と。ただ、それまでのストーリーにオリジナリティが見えず、惹きつけられなかったのが非常に残念。これだけではただの一発ネタ勝負。しっかりとしたストーリーをこのオチで考えられればとてもいい評価となったのではないだろうか。
26番 「私の履歴書 ふうかの場合」 I・K(東京・30歳)
<あらすじ>ある女子高生が、風俗嬢になることで"生きがい"を見つけ……。
寸 評
2ページ目以降から、予想した通りの展開しかなかったことが非常に残念。ただ最後に希望があったことは物語としてとても良かった。暗い物語だけではダメということを理解しているのであれば、物語の息抜き的エピソードをもっと入れて良かったのではないだろうか。いい意味で読み手を裏切るストーリー作りを心掛けてほしい。
27番 「仇討ち千之介」 N・Y(三重・58歳)
<あらすじ>不意打ちによって殺された父の仇討ちを果たそうとする、一人の若侍の人情物語。
寸 評
仇討ちをしなければいけない理由や、その覚悟といったものが上手く描かれていないので主人公が生きて動いていない。そのため読み手も感情移入できない。コマ使いや演出等は迫力満点だっただけに残念。次は主人公の心情をもっと深く描いてほしい。
28番 「ロンドン!」 椅子綾子(広島・35歳)
<あらすじ>ちょっとずれた会話ギャグを中心とした、4Pのショート・ショート作品。
寸 評
一つ一つの完成度は高いが、前回・前々回に応募してもらった作品の世界観から全く変わっていない。はっきり言ってしまえば、この世界観の作品からさらに進んだ、新しいものでないと再評価できない。次回は今までとは違う世界を読ませて欲しい。
29番 「sin and crime」 H・Y(埼玉・30歳)
<あらすじ>外国人のチャダとミユキは恋人同士として、暮らしていた。しかし、チャダが不法滞在者であることが発覚し……。
寸 評
平均点以上の出来だと思う。しかし、このストーリーを伝えるためにこの体裁が最適だったのかをもう一考してみてほしい。恋愛を題材にした作品は「よくあるストーリー」になりがち。少しずつでも、まずそこから工夫すること。そうやって誰も描いたことのない、あなただけの作品を作り上げてほしい。
30番 「楽園の果実」 M・S(千葉・37歳)
<あらすじ>記憶を失った王子を救うという、まるで聖書のような物語。
寸 評
83Pもの長編であったが、スッと読むことができ、読後感も悪くなかった。ただ、物語に深みを感じられなかったともいえる。例えば、「大切なものは何なのか、生きるとは?」といったメッセージがしっかりあった方が、読んだ後に心にしっかり残る作品になったのではないかと思う。また、この世界観を伝えるためにはさらなる画力も必要。頑張ってください。
31番 「ファウストボール」 電気石リチア(岡山・43歳)
<あらすじ>妊娠させた相手に、別れるなら手切れ金を渡すよう要求する女。その女が野球場で殺された。果たして犯人は?
寸 評
野球場で殺人事件が起きるというのは、いい設定だと思う。しかし、肝心の事件に関してリアリティがない。例えば、被害者の女性の頭にボールの縫い目の跡が残っているから、犯人は剛速球を投げる投手だろうという推測は、あまりにも短絡的。リアリティがないと感じるだけで作品に入っていけなくなる。まずは、自分がその分野に詳しく、リアリティを再現しやすい漫画を描いてみてはどうだろう。
33番 「ワタシの街」 I・K(高知・38歳)
<あらすじ>画家を目指しながらも迷っている、地方都市に住む一人の女性。彼女は、もう少し頑張ってみようという決心をする。
寸 評
非常に雰囲気があり、気になるセリフが随所に見られる作品。ただ残念なのが、画家を目指している女性を主人公にしながら、その主人公の描いている絵を表現できるだけの画力がまだ作者に備わっていないということ。絵の練習をしっかりとしていけば、叙情のあふれる作品作りをできるのではないかと思う。
35番 「正しい生命保険見直しのすすめ 500万円の線引小切手」S・S(広島・37歳)
<あらすじ>サラリーマンの前川は、待望の子供ができたことをきっかけに、生命保険の見直しを考え始める……。
寸 評
情報が詰まっていて、その点では非常に役立つ。けれども、ストーリーの魅力を軽視してはいけない。情報だけだと、ただのパンフレットになってしまう。情報とストーリーのバランスをとることが大切である。言葉ではなく絵で伝えられることは、絵で伝えてこそ漫画である。もう少し絵も工夫をしたほうがいいだろう。
36番 「兄貴 他1作品」 居酒屋まつもと(大阪・52歳)
<あらすじ>目つき鋭い兄貴とちょっと間の抜けた子分の、ヤクザ二人組が織りなすギャグ・ショート。
寸 評
ギャグ漫画として画力もギャグも成立している。しかし、ギャグ漫画で商業誌でデビューして、読者から注目されるためには、絵でもギャグでも、今までにない新しいものを要求される。今回の作品は、その新しさが欠けているように思う。どんな絵がギャグ漫画にはぴったりくるのか、様々な絵に挑戦してみてほしい。
37番 「(無題)」 H・T(東京・27歳)
<あらすじ>甘い気持ちでバイトを始めた主人公の女性が、バイト仲間の男性との出会いを通じて、人間的に成長していく。
寸 評
じっくり読むとストーリーの構成もしっかりしていて、面白く読むことができる。けれども、漫画の魅力は、絵とセリフの両方にある。フキダシからあふれるほど台詞があると非常に読みづらい。セリフの文字数は何語ぐらいが妥当なのかを、自分の好きな作品で研究してほしい。また、構図の工夫が少なく、ページが単調になっているので、次回作では、その点にも気をつけてほしい。ネームをしっかり切ってから描くことをお薦めする。
39番 「窓から見えるのは? 他1作品」 S・H(広島・35歳)
<あらすじ>部屋に寝そべっていた主人公は、その部屋の窓の外で繰り広げられる不思議な光景を目にする…。
寸 評
残念ながら、絵的にも、ストーリー面でも、何を伝えたいのかがわからなかった。自分が発想したことの面白さをどうやったら他人にも伝えることができるのか、それを意識しながら作品作りをしてほしい。出来上がった作品を周りの人に読んでもらって、伝えたいことが伝わっているか確認してみるのもいいかもしれない。
41番 「海ちゃんの玉子焼き」 I・H(東京・40歳)
<あらすじ>酒井は火事で全財産を失い、失意のどん底に。そんな酒井を元気づけようと、海はある行動に出る。
寸 評
主人公・海のキャラクターが明るく、好感が持てた。物語も『いい話』に仕上がっているので、読後感も悪くない。しかし、名料理人だった祖父の味を、なぜ海が再現できたのかについて、「これが血か」という説明しかないのでは、とても納得できない。さらに、絵柄やキャラクターのセリフ、行動に「今っぽさ」が感じられなかったのも残念。
42番 「モーニング医学百科」 奥井識仁(神奈川)
<あらすじ>心筋梗塞を患った後の心臓リハビリテーションの重要さを説く原作。
寸 評
大変申し訳ありませんが、現在ちばてつや賞では、原作の募集はしておりません。原作の応募は「MANGA OPEN」にお願いいたします。
43番 「幸せのかたち」 S・I(東京・29歳)
<あらすじ>真平は事故で車いす生活を送る妻の裕子との暮らしに満足していた。が、突如真平に5年前にさかのぼれるチャンスが訪れた! 「事故に遭わなかったこと」にできるんだ!
寸 評
「裕子が事故に遭わなかった」イコール「真平と裕子は出会わなかった」という点まではいいのだが、その後の二人が一瞬しか描かれていないので、真平のとった行動が本当に良かったのかどうか判断できず、もやもやした気持ちが残る。車いす生活でも、愛情と理解によって幸せな暮らしを送ることができる。むしろ、そちらを描いた方がリアリティがあったのではないだろうか。絵はまだまだ描き込み不足。もっともっと作品を描いて、自分ならではの絵柄を見つけてほしい。
45番 「シゴト下さい!!」 一束百本(北海道・38歳)
<あらすじ>とにもかくにもカネが必要だ。そんなわけで、引っ越し屋のバイト始めました!
寸 評
迫力があり、「カネを稼ぐこと」の大変さが伝わってくる作品。ページ数も32ページとコンパクトにまとめており、読みやすかった。ただ、読み始めてからこちらが期待したのは"現場感"。実際の引っ越し作業での苦労やテクニックなど、もう少し具体的に描いてほしかった。
46番 「紫の姫の物語」 山田悠(沖縄・43歳)
<あらすじ>源氏の君の妹として育てられた兵部卿の姫。しかし本当の妹ではなかった。
寸 評
とにかく登場人物が多い上に、関係が説明されないまま物語が進行してしまうので、とてもわかりづらかった。読み切りの場合、いくら多くても主要な人物は2、3人にとどめるべきだろう。その上でドラマを作れるよう工夫してほしい。絵に関しても、人物の描きわけにもっと意識的になったほうがいい。
48番 「トリアージ」 橋本日新(神奈川・25歳)
<あらすじ>戦場で人命救助活動をする部隊の取材をすることになったテレビリポーター。その現状は想像を絶するものだった。
寸 評
あらすじには以上のように書いたものの、実際にはこの部隊を襲撃する謎の一団を重火器で撃退する場面がクライマックス。つまり、こう展開するであろう、こう展開してほしいという期待は肩すかしを食らってしまう。期待とは、ズバリ戦場での人命救助活動の実際、だ。この点を描かないのでは、冒頭の描写は逆効果。自分で設定したテーマに忠実な作品作りを心掛けてほしい。絵もまだまだだが、見た感じでは制作作品数が少ないようだ。これからもっとたくさんの作品を仕上げれば、どんどん伸びるだろう。
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