第48回ちばてつや賞一般部門選考結果発表!!
第48回 ちばてつや賞一般部門 最終選考結果発表!!
<ちば氏総評>
優れた作品が多く集まったと感じた。大賞を選ぶのもそれで一苦労したが、『すなおになれば』は人物描写が特に優れていた。入選の『雨』も画力という点では突出していたのではないかと思う。佳作となった作品も非常にレベルが高かった。全体に共通して言えることは、絵の上手下手はありこそすれ、勢いが読者に伝わってくる作品が多かったということだ。
 大賞
 入選
 準入選
 佳作

大賞(100万円)
「すなおになれば」門井元
「すなおになれば」
 門井元(かどいげん)(東京都・34歳)
あらすじ
香菜(かな)は大きな夢もなく漫然と日常を過ごす高校3年生。ツール・ド・フランス出場という確かな夢を持つ年下の悠太(ゆうた)と出会って……。
ちばてつや氏コメント
キャラクターが明るく魅力的。長く淡々としたストーリーで大きな波はないが、心理描写やセリフが巧みで、ラストの読後感も爽やか。
作者コメント
最終選考に残れただけでもこの上ない喜びなのに、大賞の知らせを受けた時は夜中にもかかわらず身重の妻と大はしゃぎしてしまいました。
担当コメント
独特の世界観を持っていることが作者一番の強み。丁寧な心理描写に裏打ちされた世界観をさらに広げて深めることを期待する。
入選(50万円)
「雨」青蝶(AONABI)
「雨」
 青蝶(AONABI)(京都府・34歳)
あらすじ
教師の福田耕平(ふくだこうへい)は、30歳になる現在も、女性に興味を持てないでいた。そんな彼の傍らには、常に希美(のぞみ)という少女の姿があった……。
「雨」ネット限定公開中!!
ちばてつや氏コメント
恋人を事故で失った男の心の詩情を描いた作品だが、絵の表現力、描写力が見事。特に男の少年時代の瞳はドキッとするほど美しい。
作者コメント
まだまだ、物足りない自分の作品に、これだけのいい結果が出て、本当に、嬉しいです。
担当コメント
悲しい恋の物語を圧倒的な筆力で描いている。特に人物の、眼力の強さには、圧倒された。この人の描くホラー漫画が読んでみたい!

「予備校のススメ」 大石フジコ
「予備校のススメ」
 大石(おおいし)フジコ(大阪府・30歳)
あらすじ
兄の死。経済難。女装。それぞれ事情を抱えた3人の浪人生活。シニカルだけどあったかい。男たちの思いやりが泣かせる感動コメディー。
ちばてつや氏コメント
主人公ら3人の個性をきちっと描き分けられている。シナリオの立て方も巧みで、セリフやコマのひとつひとつに意味があり、演出も巧い。
作者コメント
これで「おでん」=漫画に憧れのロールキャベツを投入できます。素材を生かした「おでん」を作っていきたいです。カラシ多めでどうぞ!
担当コメント
人物設定は暗い。みんな屈折している。昔の自分を見ているようだ。ところが描写が明るい。機微が細やか。思わず最高得点をつけた。
準入選(25万円)
「つながれた飛行機 他2作」横山克弘
「つながれた飛行機 他2作」
 横山克弘(よこやまかつひろ)(千葉県・32歳)
あらすじ
飛行機に乗れない父親、引っ越し間際の駄菓子屋、桜を撮る老女。それぞれが織りなす、ささやかな奇跡を描いた珠玉の短編3作。
ちばてつや氏コメント
のどかで暖かいキャラクターと話の運びが、ホッとさせる空間を創っている。構図のとり方も巧みで、読みやすく表現できている。
作者コメント
短い作品にもかかわらず、このような賞をいただけて感激です。もっとたくさん、良い作品を描けるようにがんばります。
担当コメント
やわらかい絵柄、巧みな話運びに確かな実力を感じた。頬が緩むような読後感に心あたたまる。

「猫と杓子と狸と狐」赤羽昌和
「猫と杓子と狸と狐」
 赤羽昌和(あかばねまさかず)(大阪府・26歳)
あらすじ
某藩。殺人現場から浪人・左門(さもん)が逃走。彼を暗殺したい伊原(いはら)の罠にかかったのだ。しかし伊原を待ち受けていたのも新たな罠だった。
ちばてつや氏コメント
セリフにリズムとテンポがあるし、絵も時に凄みや迫力があって引き込まれるが、ストーリーと演出がやや雑に過ぎて惜しまれる。
作者コメント
この度は誠に素晴らしい賞を頂き感謝至極に存じます。一日でも早く皆様に作品をお見せできるよう努力してゆく所存でございます。
担当コメント
ウェスタンを思わせファンキーな時代劇。二転、三転した挙句の謎解き、そしてその後のチャンバラは特筆すべき爽快感です。

「TWISTS」戸浦丸帆
「TWISTS」
 戸浦丸帆(とうらまるほ)(東京都・30歳)
あらすじ
軽い気持ちで強盗計画に加わったサンタ。だが首謀者の「兄貴」が先に捕まった。人質の中に内通者がいると暗示して。内通者を探せ!
ちばてつや氏コメント
キャラが絡み合った複雑な話を、意外な展開を交えながら巧く演出している。ただ、主人公がラストでもっとはじけてほしかった。
作者コメント
予想外の事で、嬉しいのと同時に身の引き締まる思いです。ひたすら感謝、そして頑張ります! M山さんにもこの場を借りて。
担当コメント
2度目の受賞。密室劇を描く手腕は鈍っていなかった。謎解きの魅力で最後まで引きつけつつ人間関係を簡明に描くことに成功している。

「伴大作(ばんだいさく)CONFIDENTIAL(法律事務所)」山中義彦
「伴大作(ばんだいさく)CONFIDENTIAL(法律事務所)
 山中義彦(やまなかよしひこ)(埼玉県・35歳)
あらすじ
大手旅行社のツアーで3名が行方不明となる事故が起きた。弁護士の伴大作は、大金の臭いを嗅ぎつけ、事故の調査に乗り出すが……。
ちばてつや氏コメント
シナリオをしっかり組み立てた話でよくできている。力作だが登場人物が多く、解説も多いので、濃すぎて読みにくいのが難点。
作者コメント
年末、無為に過ごした一年を後悔する季節ですが今年は違う! マンガに燃えた夏! 受賞の知らせ、頑張って本当によかった。
担当コメント
常に読者を意識した話作りには好感が持てました。残念なところは主人公のキャラの掘り下げがやや甘い点。今後の努力に期待します。
佳作(15万円)
「神様の子」阿部未麻貴
「神様の子」
 阿部未麻貴(あべみまき)(東京都・31歳)
あらすじ
17歳の高校生カップルの太樹(たいき)とまゆは“出来ちゃった”ことをきっかけに別れてしまう。その後、まゆは堕胎した自分に罰を与えるため“援交”を始めるが……。
ちばてつや氏コメント
人物の描き方が少々荒いが、「命」という難しいテーマを正面から描こうとする姿勢が良い。援交のくだりはやや説得力に欠ける。
作者コメント
このたびは賞をいただきましてありがとうございました。いいオッサンですが、これを励みに今後も頑張りたいと思います。
担当コメント
中絶という重いテーマながら、キャラクターの明るさが救いになっている。傷心の彼女が援助交際を始める過程はやや説明不足か。

「17歳の世界」天童漫
「17歳の世界」
 天童漫(てんどうまん)(熊本県・20歳)
あらすじ
「俺は何の為に生きている?」――そう自問し続ける主人公は、強さを求めて身体を極限まで鍛え上げ、街へと飛び出す……。
ちばてつや氏コメント
演出がやや荒く、人物も筋肉に固執しすぎて読みづらいが、描きこみの強烈さから集中力や持続力の高さが伝わってくる。
作者コメント
10代最後の思い出づくりに描いた作品がたまたま当たったような感覚です。次は自分の実力で賞を獲れるようがんばります。
担当コメント
大胆なコマ割りとド派手な演出から作者のメッセージがストレートに伝わってくる。絵柄が読みづらさを感じさせるのが惜しい。

「外人さんいらっしゃい」長田俊介
「外人さんいらっしゃい」
 長田俊介(おさだしゅんすけ)(東京都・31歳)
あらすじ
深夜の羽田空港、そこでは色んな国から集まった人々が働いている。そんな多国籍な職場で、マイノリティーである日本人の主人公が、様々な文化的ギャップに遭遇する!
ちばてつや氏コメント
外国人との習慣の違いや考え方のギャップに触れて面白い。さらに深夜の羽田の世界をふくらませられるのではないかと期待。
作者コメント
賞金はネタをくれたバイト仲間の外国人たちと飲み食いに使いたいと思います。ありがとうございました。これからも頑張ります
担当コメント
深夜の羽田空港で、アジアのさまざまな国の人々に混じって働く青年が直面するカルチャーギャップ。作者の暖かい視線が心地良い。

「落下中」河合伸哉
「落下中」
 河合伸哉(かわいしんや)(千葉県・34歳)
あらすじ
主人公の田村は、容姿端麗、学業優秀、親は社長の完璧人間。しかし、そんな彼にもただ一つの欠点が……。奇跡を起こすため、田村は婚約者とヘリへと乗り込む!
ちばてつや氏コメント
絵に勢いがあり、技術的に優れた画力もある。ただ、完璧な人間がSEXのために(だけではないが)自殺行為に及ぶという物語が馴染みにくい。
作者コメント
ありがとうございます。受賞の知らせは『SAW2』を観て気分が悪くなって帰ってから聞きました。もー嬉しいんだかなんなんだか。
担当コメント
これは究極のラブストーリーである。無償の愛、性的本能、生への執着。これらが融合して感動しつつ、ニンマリするラストを迎える。

「街角カデンツァ」小達
「街角カデンツァ」
 小達(こたつ)(愛知県・31歳)
あらすじ
イギリスから転校してきた牧野は、日本の学校に馴染めない。そんな折にふと通りががった公園で、チェロを弾く中年の男性に出会う……。
ちばてつや氏コメント
セリフのひとつひとつに含蓄があり、味わいもある。淡々としたタッチが個性的だが、場面に合わせてクセをもたせるともっと良い。
作者コメント
こんな地味な作品を評価して下さってありがとうございます。次回作は今以上の作品になるようがんばります。
担当コメント
独特の“空気感”に惚れた。それこそが、努力では得られない“才能”と呼ばれるもの。この武器をより活かせる新作を一緒に作っていきましょう!!

「えみ子さんの場合」山下澄江
「えみ子さんの場合」
 山下澄江(やましたすみえ)(埼玉県・50歳)
あらすじ
えみ子さんは、乳ガンの治療を受けつつ、近所の小さなデパートでパートとして働く、ごく普通の46歳。今日も明るく仕事へ出かけるが……。
ちばてつや氏コメント
主人公が癌に侵さる様子がリアルでありながら、決して重くなりすぎず、大らかな絵と相まってバランスがとれている。
作者コメント
山下氏は今回のちば賞への応募後、ご病気でお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
担当コメント
癌と闘いつつ社会で生きる主人公の姿が爽やか。難しいテーマだが、自身の体験を踏まえて軽やかに描かれているのも良い。