第20回 MANGA OPEN 選考結果発表!!
第20回 MANGA OPEN 1次選考落選作品全303本講評!!
はじめに

 「何でもあり!」の新生オープンにして今回で3回目。応募総数の増加はとどまるところを知らず、ついに今回は303本という文字通り前代未聞の数字に達しました。応募の締め切りをめがけて編集部に届く原稿が日に日に増えてゆく様は圧巻でしたが、正直恐ろしくもありました。「今回は一体ひとりで何本講評書きゃいいんだ……」。第18回は私が、第19回は副事務局長の三村が「全作品ひとり講評」をやったので、今回はまた私の番なのです。去年の夏、第18回の講評をやったときは、普段の業務の合間を見つけてこまめにやってもなかなか進まず(なにしろワープロ打ちでA4びっしり90枚くらいの原作をひとりで5本6本送ってくる人がごろごろいる。あのときは確か応募総数260本で、うち80本くらいが原作だったと記憶します)、しかたなく他の仕事が入らなかった休日に編集部に出てくるが、昼頃から深夜までかけてうまくいって40本書くのがやっと。氷山のような原作(数年、場合によっては十数年かけて書きあげたというまっ茶色に変色した手書きの原稿用紙600枚とか)にぶちあたってしまえば丸一日がかりにもなってしまうこともありました。

 そんなわけで今回めでたく(「めでたく」です。もちろん!)応募作が300本を突破した時点で、私は密かにひとつの決意を固めました。「講評は選考委員5人で手分けして書こう……」と。自分の実名を出して、ときには罵詈雑言にもとられかねない講評を書くにはそれなりの覚悟もいります。部内選考のためにただ作品に目を通すのとはわけが違う。相当に肝をすえて一本ずつ読み込まざるを得なくなります。そんな作業を一人の人間でこなすのは、はっきりいって260本が限界! ということで、今回からは全作品に講評をつけるのは分業制とさせていただきました。あしからず。ただ、いうまでもなく選考委員全員、全作品に目を通したうえでの選考を行っております。その点はご安心ください。

 さて、前置きは以上で、第20回マンガオープンの総評に行きたいと思います。漫画に関して顕著ですが、応募者の平均年齢がかなり若返りました。何が原因かはよくわかりませんが、まあ、喜ばしいことではあります。受賞作も、技術的にはあるいは前回よりも荒削りなものが増えたかもしれませんが、その分、いわゆる「伸びしろ」の大きい作品が集まったと思います。二次選考会で、若い作家の作品を、文字通り昨日今日入ったばかりの新人編集者たちが(二次選考会は新人配属の直後でした)「あんたがたおっさん連中にはこの作品の良さはわからんでしょ」とばかりに感情むき出しでプッシュし、ベテランと対立した構図はなかなか見物でした。そんな若手の熱意に推されて最終選考まで残った作品が今回は多々あります。

 原作、原案、あるいは小説めいたものなど、文章系の応募作は前回より若干へったようですが、全作講評をはじめて3回目、今回に至って原作系では応募作がはっきりふたつの傾向に分れてきた印象を受けました。前回、前々回の講評を読んだうえで書かれた作品とそうでなさそうな作品とにです。今回が初の応募であっても、前回、前々回の講評に目を通したうえで書かれた作品は、そのことが内容にも歴然と現れていました(少なくとも私個人はそういう印象を受けました)。我々編集者、あるいは漫画家が、漫画原作というものに求めているベクトルははずしていないものが徐々にではあるが増えています。まだ今回も受賞作は出ていませんが、遠からず漫画化の日の目を見るものが現れる予感はいだけました。

 漫画でも原作系でもない、ノンジャンル系(?)の作品(イラスト、CG作品や、モーニング本誌掲載中の「俺もうハエでいいや」みたいなの)は若干低調。単に変わってるだけでは勝負にならないことが明白になってきたからでしょうか? 漫画の可能性を押し広げてゆくのは当然ながらこの辺の作品です。この夏発売された新増刊「モーニング2」も動きだし、新人作品の掲載のチャンスを今後はどんどん広めていくつもりです。次回は原作であれ、ノンジャンルであれ、もちろん漫画であれさらなる意欲作をお待ちしております。

<蛇足>
 原作部門が徐々にレベルはあがっているものの、結局今のところ受賞作はほとんど出ていないことについて。やはり漫画原作というものは本質的にむつかしい。何しろ、実際の現場においてもプロの原作者が書いた原稿がそのまま漫画家の手によって漫画化されることなんて実はほとんどないのだから。多くの場合、原作というのは原作者から漫画家へと一方通行で流れるものではなく、原作者、漫画家、編集者の三者の間を有機的に行き来しながら段階をふんで漫画化されてゆくものなのです(週刊連載であれば毎週そういう作業が延々と繰り返される)。原作というものは当たり前のことながら、単独では作品たりえないもの。一般公募の新人賞に限ってのたとえで言えば、単独で作品として成立する漫画はフィギュアスケートで、原作は、相撲やレスリングのようなもの。相手(編集者や漫画家)がいないと勝負にならない。土俵にあがって一人ではっけよいをやってるのを見ても、こっちも評価がむつかしいとも言えます。
原作の評価というのは、文字通りの「独り相撲」をしているのを見て、その人が「実際の相撲」がどれくらい強いかどうかを判断する作業に似ています。原作の応募は本質的なところで大きなハンディを背負っていると言わざるを得ません。

 前回あたりから、原作応募者の皆さんの奮闘を、そのハンディを意識しつつ見るようになりました。それにつけてもつくづく思うのは、漫画に対する深い理解と真摯な愛情をもった原作応募者たち(そんなに多くはないが、そう少なくもない)の存在についてです。
あなた方が原作を応募してくる動機というのは、要約すれば「漫画家とはまた違ったアプローチで漫画の製作に携わりたいという熱意」なのではないでしょうか。そのアプローチが、皆さんに可能な範囲でいえば、現実的には「漫画原作の応募」なのでは。しかし実は「漫画家とはまた違ったアプローチで漫画の製作に携わる」方法、というのは原作者だけではありません。その代表が編集者です(誤解がないように言っておきますが、編集者はもちろん原作者とは違う種類の職業です。ただ、漫画家と違ったアプローチで漫画の製作に関わるという本質は通じるところもあります)。そして、漫画編集者になることは、多分原作者になることよりはるかに容易です。別に講談社や小学館や集英社に入らなくても、漫画の編集者になる方法はいくらでもあります。たとえばいわゆる編集プロダクションに入る方法。色んな出版社の漫画編集部と契約している編プロが、あちこちで年に何回も人員募集をしているはずです。入ったところでどこの部署に回されるか分かったものではないいわゆる「大手」よりはよっぽど確実に漫画の編集者になれます。あるいは無茶と思われるかもしれませんが、飛び込みで漫画編集部に強引にバイトに入り、時間をかけて編集者になる人だっていないわけではありません。
漫画家みたいに才能オンリーの世界ではないだけに、こういうのは気合いも大事です。そもそも日本で漫画を出している出版社は、星の数ほどあるのですから、編集者になる機会もその気になればかなりあるといえます。今まで全然漫画編集とは関係ない世界に生きてきた人でも、それなりの熱意があれば編集者にはなれるはずです(なったあとでどこまでのものになれるかはまた別問題ですが)。原作応募者の中には、原作者になるのはむつかしそうでも、クリエイティビティそのものは感じさせるという人もいないことはないので、まさに蛇足ではありますが、あえて言わせていただきました。
漫画の未来は、才能ある漫画家の出現にかかっていることは大前提ですが、漫画家以外のあれこれの才能も待たれております。なお、モーニング編集部は現在一般からの編集者の応募は一切受け付けておりません。あしからず。

MANGA OPEN事務局長 島田英二郎

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