第19回 MANGA OPEN 選考結果発表!!
第19回 MANGA OPEN 実録2次選考会!!
以下は編集部内で行われた作品の概要と第2次選考会の模様です。2次選考では、第1次選考を通 過した31本の作品について、事務局メンバーを中心に、編集部員が参加しての議論 が交わされました。
漫画「ハミチャン」新潟県 森田徹
概 要
「ヤクの売人の修一は彼女ができたことをきっかけに仕事から足を洗おうとするが、組織の怒りを買ってしまう。そして組織は修一の彼女に目をつける」

編集部員A
「この作品は絵がすごく汚くて下手だし、内容も暗いんだけど、何か作者のマグマを感じさせるものがある。自分の中に溜まっているものをぶつける作家性みたいなものがありそう。主人公のシュウイチっていうヤクの売人みたいなことをやってるヤツのところへ、客としていじめられっ子が買いにくるんだけど、その二人を使って、抑圧され絶望的な現実への反抗をうまく表現してる」

副事務局長三村
「ぼくもすごく感動的な話だなと思いました。最後に話がいじめられっ子のところに戻るっていうシーン展開もうまいし、見せ方がうまいですよね。あとはすごく暗い話なんだけど、非常に人間をポジティブに捉えようとしている感じがする。たしかに絵が汚くて暗い内容なので、非常に間口が狭くなっちゃう可能性があるんですけど、ただやっぱり読んでいくと、相当読ませる力はあるし、かなり才能はあるんじゃないかと思いますね」

事務局長島田
「人物の顔がちょっと暗い。いい顔を描こうっていう意識を持ってないのでは? でもそれは意識を持てば変わることだし、才能は絶対あると思う」

編集部員A
「あえて明るい題材で描いてみてもらったときはどうなるのかっていうのはちょっと見てみたいよね」

副事務局長三村
「絵柄が違っていたら、相当なところまで評価されると思いますよ、この作品は」

漫画「グランドスウェルズ」神奈川県 ナイトウシンヤ
概 要
「サーファーの少年が、兄の形見の十字架を手に、兄を飲み込んだこの世で最も大きな波『セイレーン』に挑む」

事務局長島田
「話が甘ったるい。この手の安いセンチメンタリズムで話を作ろうとするのは絶対ダメ! それ以前に絵にも問題があって波乗りのシーンが、何がどうなってるかさっぱりわからない」

事務局員加藤
「たしかに肝心の波乗りのシーンのわかりにくさは致命的ですね。それと僕はサーフィンなんてやったこともないんですけど、『サーフィンってこういうものなの?』って感じがして、リアリティが感じなられなかったです」

アニメ「きくらげ」(他1)東京都 メテオール
概 要
「オリジナルの歌に合わせて作られたCGアニメーション」

編集部員B
「僕はけっこう面白いと思いました。モーニングのHP担当として、HP上でフラッシュのような形で発表していくのであればアリかなと思いました。ただこの作品をそのままというのは無理で、もっと一貫性を持たせたストーリーをつけたりしてやるのであればアリかと思います」

編集部員A
「この作品はすごく評価が難しいと思う。たしかに画面で見たらすごくよくできていると思う。だけど、そもそも送ってきた人は、この画像だけをクリエイトしている人なのか、中で展開されるストーリーまでも自分で作っているのか……」

事務局長島田
「これはBGMまで含めて何人かの集団でやってるみたいですよ」

編集部員A
「そうだとすると、画像自体はすごくよくできていると思う。つまり漫画で言うと絵は素晴らしいんだけれど話がつまらない、お金払ってまで見たくないっていうレベルだと思った。だけどあの画像を作ったってことには一定の評価を与えるべき」

事務局長島田
「私は単純に『きくらげ』より『超戦隊グレート5』のほうがおもしろいと思いました。鼻毛が電線になったり、頭のはね毛がタワーになったり、『超戦隊グレート5』のほうがギャグがあって楽しめた」

編集部員C
「僕は楽しめなかったし、面白くなかったし、絵がいいとも思わなかった。絵の完成度が高いかどうかっていうのは何人で作っているかによると思うんですけど。こういうフラッシュアニメはネット上にいっぱいあふれていて、『超戦隊グレート5』のようなパロディものが無数にある中で決してレベルの高い部類のものだとは思えなかった」

漫画「ニュースD(ディレクター)」神奈川県 火陽喜喜
概 要
「テレビ局のドラマ班から報道部に飛ばされた熱血ディレクター藤崎が、視聴率至上主義の現場に疑問を感じながらも、報道する者として自分なりの答えを見いだしてく」

編集部員B
「コマ割りが読みやすくて、話も純粋に面白かった。主人公の顔が某作家さんの描く人物に似てはいるんだけど、ところどころいい顔してる瞬間があるなと思いました」

編集部員A
「合計点が高いんで、否定意見はあんまり出ないと思うので、あえて言わせてください。この作品、すごく完成度は高いと思うんだけど、意外性がまったくなくて全部展開が読めちゃう。主人公がこの後こういう行動をとるだろうって予想したとおりにしか動かない。だから読んでいて、この人は70点ぐらいの作品は常に描けるんだけど、それ以上のものは描けないんじゃないのかなと思いました。見せ方なんかは心得ていて、新人賞に応募してきたらかなり高得点をとれるとは思うんだけど、それはやっぱり60点とか70点とかが集まってできた高得点でしかないと思う」

事務局長島田
「かつて何週か連載してましたっていうプロの方が応募してくるとこういう傾向はけっこうありますね。安定感はすごくあるけど、設定から人物からストーリーから全部約束事で固めてる感じというか」

編集部員C
「リアリティにもうひとつ欠ける」

事務局長島田
「ただすでに商業誌に発表したことのある人の場合、どの雑誌に発表したかによるけど、こういう展開にしてくれっていう要請だったっていう可能性があると思う。自由にこの人なりに描けばまた違った作品になるのかもしれない」

漫画「ブライダル・フェア」熊本県 鍬先かおり
概 要
「ホテルの厨房で働く山口は急きょブライダルフェアのモデルをやらされることに。その相手は日ごろから想いを募らせているフロントの鈴木さんだった」

事務局員加藤
「16枚という少ないページ数の中できちんと話をまとめているし、雰囲気もあって、短編としてはよくできていると思いました」

副事務局長三村
「たしかにいい話なんだけど、すごくいい、とまではいかない」

事務局長島田
「うん、なんとなく親しみのもてる絵で、なんとなくいい話なんだよね。この『なんとなくいい』っていうのは重要で、『なんとなくいい』でプロになることは十分可能。だけどその『なんとなく』がちょっとやそっとの『なんとなく』ではダメ。強烈に猛烈に『なんとなく』じゃないと」

一同
「???(笑)」

事務局長島田
「そういう意味ではこの人は『なんとなく』の才能は足りないと思う。親しみやすくていい絵をもっているんだけど、演出がストレートすぎる。もっと人の心を掘り下げたうえでちゃんとドラマを作るべきだと思う」

小説「モモ肉」千葉県 すぎ山美彩
概 要
「スーパーの肉部屋で働く青年が次第に生肉に興奮していく様を描いた一人称小説」

編集部員A
「これは完全な小説で、漫画原作として書かれたものではないので全く期待せずに読みはじめたんですけど、登場人物のキャラがすごく鮮明に描かれていて、すごく面白くて、最後まで一気に読めた。スーパーの精肉部門の生々しさからオナニーにもっていくっていう展開がすごかった!」

一同
「(笑)」

編集部員A
「しかもそんな主人公にすごく共感できるし。この人はすごい発想の持ち主だと思う」

編集部員D
「そうですか、『引きこもりがちの青年が生肉に触れてオナニー』ってわりとありがちな展開じゃないですか? 」

一同
「ありがちではないだろ!(笑)」

編集部員A
「そんな話は聞いたことないよ(笑)」

編集部員D
「いや、現実にはともかく小説の世界でこういう展開になるのは、すごくありがちなんじゃないかと思って……」

編集部員A
「ただこれをこのまま漫画化するのはちょっと厳しい」

事務局長島田
「うん、厳しい。この人、これを漫画原作にしてくれって送ってきてるんですよ。他にも『これを漫画化したら面白い』って言って変な文章送ってくる人がいっぱいいるんだけど、『どこが漫画にできるんだよ』っていう物ばっかり。自分の作品を漫画化してほしいっていう個人的な思いと、その作品が客観的に見て漫画化に値するかどうかっていうのは全然別のもの」

編集部員A
「だから作品は小説としてはおもしろいんだけど、この人が漫画の原作を書けるかどうかは未知数だと思う」

事務局長島田
「ただこの人は漫画の原作を書いたら面白い物を書くのでは。イメージはかなりのものだし……」

編集部員E
「たしかに漫画の原作となると難しいんですけど、読んでいてすごく人物が想像できて楽しんで読めました。こういう登場人物がいて、こういうふうに動いてるんだっていうのが、ビジョンとしてわかるんで、そのへんはやはり表現力があるのかなと思います。ぼくもやっぱり漫画原作も描ける人なんじゃないかと思います」

副事務局長三村
「やっぱり読み物というか、小説としてはすごくよくできていますよね。前半のスーパーの精肉部門の雰囲気がすごく伝わってきて、ビジョンが浮かんでくるのはたしか。でもそれは実はきわめて小説的な手法で描かれてるからなんですよね」 編集部員F 「この人が非常に表現に気をつかってるのは、匂いとか触感とか色の部分。だからそれを絵にできるのかってことだよね」

副事務局長三村
「そうですね。だから漫画とは全く異質なので、非常に評価が難しいなとは思いますね」

事務局長島田
「でも、たしかに生肉を見てオナニーしたい衝動に駆られていく主人公の心情みたいなものは伝わってきた。だから才能は感じる。今回も原作原案の応募が80本くらいあった。もっと漫画原作向きの話はいくらでもあったけど、いくら漫画にしやすくてもつまらないんじゃ仕方ない。これは作者に原作者としての可能性を感じさせるという意味で、複数の支持を得るだけのものがある」

漫画「四丁目も夕日〜オトナは判ってくれない〜」東京都 セキグチアキラ
概 要
「謎の転校生・田村君の行動を追う小学生の女の子2人の物語」

事務局長島田
「この作品はまったくわからなかったなあ」

編集部員D
「私は評価しました。みんなもっと評価が高いと思ったんですけど。印象批評にはなりますが、純粋に今回の31本の中でどれが一番読んでいて楽しかったかというと、この作品だったんで自分に正直に高得点をつけました」

事務局長島田
「これ、ラスト一体どういうことだったの?」

編集部員D
「いや、私もストーリーは全然わからなかった」

一同
「(笑)」

事務局長島田
「わからないよねえ。何か面白そうな感じはするんだけど。これ一体どう いう話なの?」

編集部員G
「投げっぱなしなんだよね、いろんなことが」

事務局長島田
「深遠なオチがあるわけじゃないよね」

副事務局長三村
「多分ない。読んでいて一瞬ページが飛んでるのと思いましたよ」

編集部員D
「普通、予想もつかない展開の話でも、こういうふうにしたのはこういう理由だったのかって後からわかるじゃないですか。でもこの人の場合はちょっと頭の中をのぞいてみたいなってぐらいわからない。だから大化けする才能を持ってるんじゃないかと思う。絵も人をひきつける何かを持ってると思うし、作品としてではなく才能として評価したいです。応募の封筒の表書きとかも楽しんで書いてるんですよ。隅っこに寄せて書いたりとか。タイトルも『大人はわかってくれない』じゃなくて『大人はわかってれない』ってなってるし」

事務局員加藤
「それはただの間違いじゃないですか(笑)」

編集部員D
「わざとぬかしてるんじゃないかな」

事務局長島田
「何かこの人、ケムに巻いたような漫画だから、なんとなく何かありそうって思っちゃうけど、そうじゃなくて確実にこういう才能があるって意見はない?」

編集部員G
「それは絵でしょ。相当いいと思う」

編集部員H
「1コマ1コマの絵を見てると、その奥にあるストーリーとかが感じられてすごく楽しい。たしかに話は脈絡がないんですけど、田村君って転校生とか見てるだけですごく面白いし。すごく可能性を感じますね」

漫画「縫いぐるみ譚(ものがたり)」東京都 寺尾佳和
概 要
「しゃべって動くぬいぐるみと女子高生の不思議な交流」

事務局長島田
「私はこれはすごく面白くてかなり評価しているんですが」

編集部員C
「ぼくもです。キャラクターがかわいくてすごく笑えました。この人は2004年のちば賞に警察犬の話を応募してきて2次選考で落ちてるんですけど、そのときは犬の描き方はすごくかわいかったのに、話がちょっと破綻してたんですが、今回の作品を読んでこういう風に変われるんだと思ってビックリしました」

事務局長島田
「いくつかのショートストーリーで構成されてるんだけど、どうせこういう展開なんだろって思ってると、最後の1ページぐらいで『え? そう行くの?』という微妙に先が読めないところへ持っていく。あと面白いと思ったのは設定。死んだ子どもの霊がぬいぐるみに乗り移ってる話なんだけど、この設定ってすごくふくらむ可能性があると思う。要するに『死ぬ』ってどういうことなのか、そして死んで生き返った人間が自分の短い人生に対して何をどう思うのかとか、よくあるかわいいキャラクター物では終わらない可能性がある。だからこの作品を本誌に載っけてすぐにポンと人気が出るとは思わないけど、載っけて少し我慢していれば意外にどんどんふくらんでいって読者を獲得して行く可能性があるような気がしました」

編集部員C
「警察犬の話を描いていた人が、どういう転機があって今回のような作品を描いたのかはわからないですけど、設定次第でいろんなものをやれる人なんだろうと思いますね」

漫画「バイラマン」東京都 小林宏至
概 要
「人体実験によって生み出された兵器・バイラ体とその回収を命じられた特殊部隊の攻防をフルカラーで描く」

編集部員B
「主人公の顔なんかはまだまだなんですけど、コマのテンポがすごくいい。話の進みが遅くてまだ何も始まってないですけど、けっこう続きを読みたいと思わせる力があるのでは。これからネームを描くのに慣れて1話でもっと話を進められるようになると、続きの気になる話を作っていける人になれると思います」

編集部員I
「この人は僕が持ち込みを受けて担当しているんですけど、自分の世界観みたいのをちゃんと持っているので、その設定なんかがすごく楽しめる。ふだん漫画を全然描いたことがない割には読みやすいコマの割り方で、そういうところにも惹かれました」

事務局長島田
「けっこうみんなの点数が高いんだけど、私にはゲームにすごくよくある話じゃないのって気がしたんですが……。それにモノクロだったらこの絵、どうかな? まあでも、この賞はそういうことで評価をきつくしちゃいけないような気がする。ホームページ他、カラーでもいくらでも発表媒体はあるだろうから」

漫画「心あるままに」(他1)静岡県 城戸みつる
概 要
「森で熊に襲われるという4コマ漫画が、それを描いているときの作者の気分によって次々と変化していく」

編集部員J
「僕は『心あるままに』のほうが才能を感じて、『最近元気のない王様を笑わせてあげよう』のほうは正直あんまり面白くなかったんですよ。『心あるままに』の4コマがどんどん崩れていくのが、読んでいて途中からだんだん中毒症みたいになってきて面白かったです」

事務局長島田
「こういう人ってこういうネタをこのレベルで延々描き続けていけるんならアリだと思う。そういう意味でも『もう俺、ハエでいいや』(前回のさだやす賞受賞作)が圧倒的に示してるのは、こういうものはいっぱい量を送ってこれたらすごく有利ってこと。これがもし100本あって、100本このレベルだったら絶対受賞する」

編集部員K
「今回のは出会い頭の勢いみたいのがあるから、このレベルでずーっと続けてくっていうのは難しいんじゃないかなあ」

事務局長島田
「でもそれは試すしかないんじゃないかな。とりあえず出会い頭の勢いはあったってことは評価できる。ほとんどの作品は出会い頭の勢いもないわけで」

事務局員加藤
「僕は逆に『心あるままに』よりも『王様』のほうが面白かった。作者の定型を崩してこう、崩してこうっていう意欲がいいなと思って……」

事務局長島田
「うん、この崩しがえんえん5年間ぐらい続いたら天才なんだろうなって思う」

編集部員D
「吉本新喜劇に通じるクドさですよね」

事務局長島田
「それほめてんの?」

編集部員D
「ほめてますよ。2本あって2本とも一定のレベルをクリアしているのは大したものだと思いましたけどね」

事務局長島田
「たしかに。一方は出会い頭の勢いがあって、もう一方は全然ダメだったら、『この人ダメだろう』みたいのはあるけど、この人の場合2本ともある程度の勢いは感じる」

編集部員D
「それにこの人の方向性って2本とも同じじゃないですか、メタ四コマというか、外から見て崩して行くっていうのは。同じスタイルで2本とも新鮮で面白いっていうのは、すごいことだと思います」

漫画「座二郎のデタラメコミック!」東京都 座二郎
概 要
「電車の中で読みたい漫画がなくなってしまったために、A5ノートに自分で描き始めたというエッセイコミック」

編集部員G
「『自分の読みたい漫画がないから電車の中で描きました』って言うんだけど、これはほんとに自由に描いてるうらやましさで、すごく面白いと思った。あとこの人『わたせせいぞうといましろたかしを足したような漫画が描きたい』って言ってるんだけど、微妙にそうなってるところがすごい。そんなのありえないと思うじゃない。でもなんとなくそういう匂いがあるんですよね」

事務局長島田
「たしかにそういう着眼点で狙いを定めて、そこに近いところに持って行くっていうのはすごい」

編集部員G
「うん、すごいと思う。『面白い漫画がないから自分で描きはじめた』って言ってるわけじゃない? だからもしかしたらすごい“達人”なのかなあと思って」

事務局長島田
「今の話を聞いて急に評価が上がったなあ。要するにこの人は今までになかったジャンルをぼんやりではあっても“見てる”可能性があるってことでしょ?  『女にあげるならパイナップルだ』っていうくだりがすごく笑えたんだけど。さっぱりわかんないんだけど、なんかちょっとわかる気もするっていうあたりのリアリティが……」

編集部員D
「パイナップルの話はわたせさんといましろさんを足して2で割った感じしますよね」

編集部員G
「公約守ってるよね(笑)」

編集部員I
「これがノンフィクションだったらノンフィクションとして面白いし、フィクションだったらけっこうリアルに描かれてて面白いし。内田春菊さんの『私たちは繁殖している』みたいな、フィクションなのかノンフィクションなのかがわからない面白さがすごくあるなあと思った」

編集部員H
「面白いですよね。濃いんだが気が抜けてんだかわからないっていうか、緻密に描いてるんだけど、ポワンとしてるというか。この空気の絶妙さっていうのはなかなかみたことないんで。引き込ませといて最後抜かせる感じって言うんですかね、この湯加減がいいあんばいで大好きです」

事務局長島田
「たしかに数値化できない、なんとなくの雰囲気があるよね、この人は」

漫画「SILENT FREAK SHOW」(他1)京都府 MONS
概 要
「シュールでグロテスクな4コマ作品」

編集部員I
「2本あって『ウサギのウサじ』のほうは何が面白いのか全然わからなかったんですけど、『SILENT FREAK SHOW』のほうは『何だこれ?』って感じで読んでいくうちに中毒的になって読んでしまいました。1番最後のネタの切れた鼻が戻って来たりとか、物語っぽくしてるんですけど、そのキレた世界観で長編を書いてみてほしいと思いました」

事務局長島田
「いわゆるブラックユーモアなんだけど、ぎりぎり惜しいところで気持ち悪さのほうが勝っちゃってる感じがするんだけど……」

編集部員I
「ブラックユーモアで笑えるって感じじゃなくて、変な世界観だなって僕は思ったんですよ。笑える笑えないじゃなくて、その変な感じがいいのでは」

漫画「鉄を曲げる者」(他1)神奈川県 湖東実穂
概 要
「電車内で痴漢に遭った女の子が、痴漢と殴り合い決着をつけるまでをセリフを一切使わずに描いた作品」

編集部員I
「僕が持ち込みを受けて今担当になっているんですけど、この作品は話自体が面白いというより、絵の勢いとテンポがすごくよかったと思いました」
編集部員F 「サイレントで描かれてる『鉄を曲げる者』のほうは、サスペンスタッチで見せるというか、セリフなしでここまで構成できるのはなかなかのもの。ただオチを『何だそれ』って登場人物に言わせてるっていうのが、ちょっといかがなものかと思うんですけどね」

事務局長島田
「痴漢をつかまえて警察に突き出すんじゃなくて、殴って決着をつけるっていうのが、スピリットが感じられてなかなかいい(笑)。絵も親しみのもてる絵で下手じゃないし、コマ運びもちゃんとしてるんだけど、この人は本格的なストーリーが作れないのでは? ほとんどの人は『鉄を曲げる者』のほうを評価してるのかな?」

副事務局長三村
「やっぱり『鉄を曲げる者』のほうはキャラクターがいいから。でも設定がないから、ストーリーが、ただケンカの勝ち負けっていうことになっちゃってる」

事務局長島田
「キャラクターが“いる”だけだからね」

編集部員I
「痴漢の話は実話なんですよ」

副事務局長三村
「ええっ、じゃあ本人が実際に痴漢を殴ったことがあるわけ?」

編集部員I
「殴ったみたいです」

副事務局長三村
「かっこいい人だねえ(笑)。実話なら、そのへんの設定というか背景を掘り下げていけば、ちゃんとストーリーを作っていけたんじゃないかな。今回のは一発ネタみたいになっちゃってるからね」

漫画「ダイヴ」東京都 能登啓太
概 要
「25年前、ハイジャック犯が乗客から巻き上げた所持金とともに飛行中の旅客機からダイブした。その金と死体を探す男2人は、森の中で老人と出会う」 編集部員F 「すいません、質問なんですけどすごく高い高度で飛行中の飛行機のドアを開けて、その前でこんなふうにもみ合ったりできるの?」

事務局長島田
「もちろんできないでしょ(笑)機体に穴があいただけで気圧の差で吸い出されちゃうでしょ。ま、それはたしかにあるんだけどそこには目をつぶろう。そういう話をし出すとダメになっちゃう作品はすごく多いんで」

編集部員A
「『減圧します』とかなんとかっていうセリフがあったよ。一応説明してる」

編集部員B
「ちょっとわかりにくくはあったんですけど、でも途中からこの先どうなるのかなって引きこまれた。読ませる力はすごくある」

編集部員C
「この作品、奇妙な話なんですけど、コマ割りがうまいんで、読んでいて引き込まれる。特に飛行機から蹴落とすシーンなんかはけっこう息を飲んで読みました。最初読んだときはメリハリのない絵だと思ったんですけど、でもほとんどの欠点が解消できることなんじゃないかと思うんで、担当になれればお会いして打ち合わせたいな、と思いました。」

事務局長島田
「そうするとストーリーテリングはあるということかな?」

編集部員C
「そうですね」

編集部員G
「僕はこれが一番面白かった。もちろんさっき話に出たもみ合ってるシーンがおかしいとかっていうのはあるんだけど。まずすごく読みやすい。それから変わった話なんだけど、ほとんど後戻りせずにサアーッと読めるんだよね。だからそういうコマ運びのうまさっていうのもあるし」

事務局長島田
「これこそさっきの『モモ肉』みたいなもんで、小説にしたほうがよかったんじゃないのって気がしちゃった。才能はあるのかなとは思ったけど」

編集部員G
「たしかにそれはあるかもしれない。けど小説にしたほうがいいんじゃないかっていうくらいのレベルの話を漫画のコマに落とし込んでサーッと流して読ませるっていうのは、なかなかできないことなんじゃないかな。ストーリーとしてはかなり変わってても、ちゃんと読ませてくれて面白いし、絵も緊張感あったしね」

事務局長島田
「変なことを考える力、いわゆる奇譚をつかって人間の何かを描くという才能があるんでしょうね」

編集部員L
「ちょっと拙い感じはするんだけど、コマ運びなんかで微妙な感じとかをうまく表現できてるなと思います。この人はストーリーから入って作品を作っているような気がしますね。圧倒的なキャラクターを描くことは不得手かもしれないですが、ストーリー全体を通して人間の何かを描くとか、そういうことで話を進めていくと、地味だけど面白いものを作れる可能性があると思いました」

漫画「大そうじ」東京都 矢寺啓太
概 要
「近未来の大みそか。別れた妻に似せたロボットと暮らす男は、妻への思いに決着をつけるため富士山頂にロボットを捨てに行く」

事務局員加藤
「『思い出は捨てるもんじゃなくて、積み重ねるものだ』っていうテーマを軸にして話の世界観をきっちり作れてると思います。絵はちょっと読みにくい感じがしましたけど」

副事務局長三村
「ぼくもこれは評価します。たしかに絵がちょっと読みにくいし、なかなかキャラの強さで持っていけないタイプの絵なんで、そこは欠点なのかもしれないですけどね。いい意味ですごく軽く読ませてくれるな、って思いました。SF的な要素が入っているんだけど、ちょっと懐かしい感じもして、そのへんをちゃんとドラマに持っていけてる。これでもし女のロボットのキャラがちゃんとかわいいキャラとして描かれていたり、絵の部分がちゃんとしていたら、もっとみんなの評価も高かったんじゃないかなと思うんですけど。あと1番の作品と同じことなんですけど、人に対してポジティブなメッセージが詰まってるのが非常によいと思います」

編集部員D
「やる気のない絵がお話とちょうどマッチしてていいなあと思った。このテーマでこの話でガチガチに固めて描いたらちょっと暑苦しい感じがする。テーマ的には真っ正面からなんだけど、端々でちゃんと肩の力抜いてるところがすごくいい」

副事務局長三村
「絵がもうちょっと一般的にかわいいって言われる域まで行けると、可能性がうんと出てくるんじゃないかな。そうじゃないからかなりマイナー臭が漂ってる。だからそこを脱却してもう一歩行けるかどうか。年齢的にも若いんで、まだまだ絵も変わる可能性があると思う。たくさんの読者の支持を得られる絵っていうのを手に入れられたら可能性があるんじゃないかと思いますけどね」

イラスト「search」三重県 豆ナス
概 要
「繊細なタッチで描かれたイラスト6点」

編集部員J
「イラストとしては、うまいですし漫画描いたらどうなるんだろうとは思いました。ただ何でこれが二次選考に残ったのかっていうのがちょっと聞きたかった。正直どうやって評価すればいいのかわからなかったので。今回の応募作品にもイラストがけっこうありましたけど、イラストで残ったのはこれだけだけじゃないですか。それはなぜなんですか?」

事務局員加藤
「ぼくと三村さんが推しました。この人が漫画を描いたらどうなのかな、と思ったんですよね」 編集部員F 「こんだけ絵が描けるのに漫画で応募しないってことは漫画は描けないのでは?」

編集部員E
「このイラスト自体は好きなんですけど、目を描いてないっていうか、ごまかして描いている感じがしてしまうので、これだけではいい評価を与えられないですね」

漫画「暗い砂に臥して死ね」大阪府 nek
概 要
「ある日、猛烈なのどの渇きを覚えた青年は、水では満ち足りず、石油を飲みはじめる」

事務局長島田
「暗い話だけど、私は評価します。言葉だけで伝えられないテーマっていうのがあったときに、物語っていうのはそれを伝えるためにあるわけだけど、この人はそれをわかっていて、ちゃんと伝えられるだけの力があると思う。まだ19歳で若いんだけど。今回若い人の描く話って意外とウソくさい話が多かったんだけど、この人のは暗いけど、自分の世界観・人間観があってそれを伝えようとしている」

編集部員M
「主人公が油飲んじゃう感じとか、うらぶれた街の乾いた感じだとか、すごく空気感が伝わってきたんですよね。話自体はよくわからないところがあると思うんですけど、そういう雰囲気というか空気感が描けるって言うのはけっこうすごいかなと思いました。この作品以外のものも見てみたいっていう気もすごくしました」

漫画「中間の人間」徳島県 水上暁
概 要
「ミュージシャンを目指して路上で弾き語りを続ける青年。ある日を境に青年の住む部屋の天井が徐々に下がり始める」

事務局長島田
「話としては好感が持てるもので、けっこう支持がありここまでは残りましたが、あまりにも絵が見づらい。自然に描くとこういう絵になってしまうんならともかく、作為的にこういう絵を描いてるんだとしたら絶対に直すべき。絵に自信がないのかもしれないけど、奇をてらわずに愚直に描いてほしい。漫画って画力は関係なくて、下手な絵であっても思いさえ伝われば成立するんだから」

事務局員加藤
「たしかにこの人に関してはストーリーがどうこう言う以前に、人物の顔がおばけのようで愛着が持てないし、出てくる人物みんな同じ造作で区別がつきにくいとすごく思いました」

事務局長島田
「18歳で高校3年生でしょ。まだまだ若いんだから可能性はいくらでもある!」

漫画「モンマン」東京都 シスター狼
概 要
作者とその友人たちの身の上話をもとにして描いた12コマ漫画7ページ。

事務局長島田
「それなりの人物図鑑にはなっていると思ったけど、どうも出てくる人物に好感がもてなかった」

事務局員加藤
「でも他にもいろいろネタをたくさん持ってそうな人生を送ってる感じはして、ぼくは評価したいんですが」

事務局長島田
「ネタを持ってたとしてもそれをどう漫画に落とし込めるかが問題でしょ。この人の事物に対する観察眼がすごくありきたりな感じがしてしまった」

副事務局長三村
「自分と友人の身の上話をもとにして描いたフィクションだって書いてあるけど、フィクションだって断るなら、もっと演出をほどこすべきだと思う。これじゃあただ事実を羅列しているだけにしか見えない」

原作「人格裁判〜guilty or not guilty〜」千葉県 竹内理一郎
概 要
「被告の人格そのものに潜む有罪性を裁く人格裁判制度が導入された近未来の法廷劇」

事務局長島田
「これは一次選考のときに私は落としていいと思ったんですが、とにかく残そうっていう意見がけっこうあったので残しました」

副事務局長三村
「うーん、原作ってやっぱり、どれくらい厳しく見るかっていう基準が正直難しいんですよね。でも原作の応募の中では一番レベルが高かったと思います」

事務局長島田
「相対評価ならそうかもしれない。でも純粋にこの作品に関して言うと、アイデアも構成も粗が多すぎてイマイチでなくイマニかイマサンだと思う。やっぱり粗だらけではあっても、この設定だけはちょっと普通の人間には絶対考えつかないな、みたいなものがひとつでもあれば、可能性があるかなとは思うけど、このくらいのアイデアとプロットの組み方だったら話にならないと思う」

漫画「扉の向こうから」東京都 齋藤雄飛
概 要
「妻の自殺を幇助した罪の意識に苦しむ夫が迷い込んだ世界で巻き起こる、魚のタクシードライバーとの珍道中」

編集部員C
「わからないところが多かったんですけど、すごく魅力的でいい話だなと思ったんですよね」

事務局長島田
「いや、でも俺はこれよりさっきの『暗い砂に臥して死ね』のほうがよっぽど評価高いんだよ。要するに、いかにも『命は大切です』みたいな話を描いてるんだけど、『ほんとにそんなこと思ってる?』って気がすごいするんだよ」

編集部員C
「それはさっきの『暗い砂に臥して死ね』の人は本当に思ってるってことですか?」

事務局長島田
「うん、『暗い砂に臥して死ね』の人は自分がほんとに思うことを、まあ、そんなに一般的に受けない話かもしれないけど、伝えようとしている。この人は何か人の目線を意識しすぎな感じがするんだよ」

編集部員A
「僕はやや評価してます。『自殺幇助のニュースからこの話を考えました』って書いてあったんだけど、自殺幇助の話から、魚が出てくる天国っていう舞台を考えたっていうのは才能かなと思った。あとこの人が頭の中で考えたキャラクターなり世界観っていうのは魅力的だと思いました」

漫画「まぼろし」埼玉県 中島守男
概 要
「家庭をもつ52歳の平凡なサラリーマンが突然、黒沢恵というアイドルをたまらなく好きになる。しかし実はそんなアイドルは存在しなかった。果たして男が見たのは夢か幻か?」

編集部員A
「この作品って4番の『ニュースD』と似てる感じがする。つまりよくできた話で粗もなくて完成された展開なんだけど、この作者の人がここからレベルが上がって行く感じはしない。でも平均点はつけてしまうってパターン。すごい魅力があるというよりうまさが目立つ」

編集部員I
「わりと淡々とした感じで読みやすいし、話もまあまあなんですけど、登場人物にそんなに魅力がないんですよね」

事務局員加藤
「これ最後全部が幻だったとかいうオチになってましたよね?」

編集部員A
「幻ではないんでしょ。息子の嫁さんとして再会してるから。で『あっ!』とか言われてるってことは、実際会ってたってことだから夢とか幻ではないでしょ」

副事務局長三村
「そうですね。だから息子の嫁を助けたって話なんでしょうね。実は良く考えるとなんだかよくわからない(笑)。ただ20ページできちんとまとめて話つくってるっていうのは、さすが経験のある人だなっていう感じはしましたけどね」

漫画「幸せのねづみ姫」京都府 川崎律子
概 要
「自宅のドアの前で死にかけていた生後まもない子猫を育てることになった男。次第に猫への愛情が芽生えていくが……」

事務局長島田
「これ意外とみんなの評価低いんだよね、私は読んでちょっと泣いちゃったんだけど、ダメですか?」

編集部員I
「けっこうジーンとしたんですけど、圧倒的に猫がかわいくないですよね」

事務局長島田
「そうかなあ? でもこんなねずみみたいな猫でも読んで泣かせるんだからうまいと思うけどなあ」

一同
「(笑)」

事務局長島田
「いやあ、さっきの『扉の向こうから』は、『命は大切だ』って言ってて、なんかそう思ってるのが伝わってこない感じがしたけど、この人は年の功もあるだろうけど、心の底から『命って大切だよね』って思ってるのが伝わってきた。やっぱりほんとに何か思ってそれをきちっと読んでる人に伝えるっていうのは才能だし、この人にはそれがすごくあると思う。私はこの人が描いた医者物とか読んでみたい。たしかに猫はかわいくないけど、この人は猫なんかどうでもよくて、猫なんかに縛られないでいくらでも話を描けるんじゃないかな」

編集部員M
「漫画家さんが飼い猫について描いた猫漫画のアンソロジーがあるんですけど、そこに猫が死ぬ漫画がたくさんあるんですよ。それを読んで思ったんですけど、猫ってちょっと特別な感じで、飼い主の感情移入の度合いが濃いんですよ。だから新人賞クラスの作品でも『猫が死んだ』という事実でみんな泣けるんですよ」

事務局長島田
「そんなことないよ、俺、普段猫なんて死んだって何とも思わないもん」

一同
「(笑)」

編集部員I
「この人が他のものを描いてどこまで描けるのかっていうのは、ちょっと何とも言えないんじゃないですかね」

事務局員加藤
「ぼくもそう思います」

漫画「現代イソップ考『アリとキリギリス』」香川県 BEN
概 要
「『巨人の星』のキャラクターを使ったイソップ寓話」

事務局長島田
「問題作! まあ、問題表現が多すぎてどう考えても誌面には載っけられないんだけど」

副事務局長三村
「正直僕は今回送られて来たギャグ漫画の中で、これが面白すぎて、他のは全部かすんじゃいましたね。えーと、これはどうしたらいいのでしょうか?」

一同
「(笑)」

事務局長島田
「ラストページに予告のある続編の『うさぎとカメ』をちょっと読みたいなと思ったんだけど」

一同
「(笑)」

副事務局長三村
「これどうしたらいいんですかね?」

事務局長島田
「ほんとに才能があればパロディじゃなくても描けるんだから、『パロディじゃないの描いてください』って言えばいいんじゃないの?」

編集部員F
「でも読みたいのは、『巨人の星』のパロディの『ウサギとカメ』なんだよね」

一同
「(笑)」

副事務局長三村
「うーん、載っけられない部分があまりにも面白いんですよね」

事務局長島田
「やっぱりパロディじゃないもので勝負してほしいよね」

漫画「BUSINESSCARD」熊本県 後藤雅史
概 要
「妖怪や漢字の成り立ちなどをネタにした4コマ作品多数」

編集部員C
「『ポット出のヤツ』っていうネタが一番おもしろかった。一瞬ポットから出てくる貞子に目が行くんで意表をつかれた」

編集部員D
「そうそう」

事務局長島田
「『卵の立たせ方』のネタなんかどう?」

事務局員加藤
「おもしろいですよね。なんかこの人、わりと今まで見たことのない独特のセンスを持っている感じがしたんですけど」

事務局長島田
「なんかいろんなことをちょこちょこちょこちょこいっぱい考えてはいるよね。引き出しは豊富なんじゃないのって感じがする」

編集部員B
「だけど絵に関して言うと、実はカラーだからけっこういい絵だっていうところがあると思うんですけど」

編集部員D
「主線がすごくシンプルで太くて色のついてる絵ってモニターで見るとすごく見やすいんだけど、雑誌に掲載するとなると厳しいとこはありますよね」

事務局員加藤
「そうかな。この絵ならそんなこともないのでは」

デジタル漫画「僕らはみんな動いてる。」茨城県 公共りょうこ
概 要
「音と動きで見せるFLASHデジタル漫画」

編集部員I
「子ども向けとしてはすごく完成度高くてかわいいなあと思いました。話もまとまってたし」

事務局長島田
「別にこれ子ども向けに作ったわけじゃないと思うんだけど。子ども向けとしてはって言われても(笑)」

編集部員I
「完成度はすごい高いなあと僕は思ったんですけど」

編集部員F
「普通に紙に漫画として描いたら面白いのかな?」

事務局長島田
「面白くない! 動いてるのを逆手にとって読ませるところもあるとは思ったけど……」

漫画「チャイ・スー」島根県 雪児
概 要
「引きこもりがちの日本人の少年が、出稼ぎに来ているタイのムエタイ選手と出会い、キックボクシングの練習を通して自分の弱さを克服していく」

編集部員B
「この人は以前にちば賞で大賞をとってる人ですよね」

編集部員K
「年とったロートル空手家が大会に出て若造と戦うっていう話ね。2、3年前くらいじゃない?」

編集部員F
「その頃の常連だよ」

事務局長島田
「今回の中では間違いなく一番完成度は高いですよ。すでに何度も賞をとってるってことは、ここが限界っていう感じの人なのかな?」

編集部員B
「いや、絵が昔よりかなりうまくなりましたよね」

事務局員加藤
「うん、一瞬わかんなかったぐらい」

編集部員B
「一緒の人だとはすぐに思わないですよね。主人公の顔もすごくうまくなってますよ」

編集部員D
「前の空手の話のときは絵が未熟だったんで、この人うまくなったら格闘シーンとかすごくなるのかなという予感があったんだけど、今回の作品を見るとある意味完成されちゃってて、やや限界を感じてしまうんですが」

事務局長島田
「いいと思ったけどなあ。サラッと描いてるから自然に読んじゃいますけど、この主人公二人の関係っていうのは、設定として意外によく練れてる」

編集部員B
「ぼくもこの作品自体はけっこう楽しめたんですけど、これと4番の『ニュースD』とそんなに差はなくて……」

編集部員G
「いや、それは比べると大きな差があると思う。絵のレベルとか、あえて言うけど“ベタ”な展開とか、そういうのはすごく似てる。ただこっちは甘えた人間関係からちゃんと一本立ちしていく人間をきっちりと描いてる。人の描き方には格段の差がある」

事務局長島田
「ただ絵面がすごく暗い感じがする。多分それは背景があまりうまくないからだと思う。人物はちょっと地味っぽいけどすごく描けてるのに、他の部分がこなれてないことですごく損をしていて、華のないものに見えてしまっている……。今の漫画は背景の精度、美しさも途轍もなく上がって来ているので、背景がプアだとやはり損はしますよね。

副事務局長三村
「ぼくもこの作品は評価します。漫画っぽい設定ではあるんですけど、すごくリアリティがある。キャラクターの言ってることにすごく力がある」

編集部員D
「この人、多分こういう格闘技の世界を描いていきたいんだと思うんです。でもドキュメンタリーとしては、地道に日々努力していく人々っていうのはいいですけど、漫画としてはこの描き方は地味だなって思う。格闘漫画って、どこかにケレンとか怪物性みたいなものがないと漫画としては面白くないじゃないですか」

事務局長島田
「たしかに仮にずっと描いていったとしても地味なテイストは変わらないかもしれないけど、地味だからつまらないのかっていうとそうとも言えないと思う。地味なんだけど読者が主人公をすごく好きになるってこともあるんじゃないのかな」

漫画「color blossom」 斉藤弘朗
概 要
「視力が悪化し色覚に障害の出た妻に夫が贈った誕生日プレゼントとは?」

事務局長島田
「この人、この間のマンガオープンにも応募してた人ですよね」

編集部員L
「はい。ぼくが担当なんですけど。そのときに比べて、絵はうまくはなったと思います。あと描きたいという気持ちがすごく強くて、それに向けてセリフを作っているので、セリフはおもしろく描けてるんじゃないかなと思ってます。参考にいろいろ意見を聞かせてください」

事務局長島田
「『もっと普通に描いてくれよ!』ってすごく思う。なんか変なアングルばっかりで、全然何の絵かわからない」

編集部員L
「この人、全然絵の勉強をしたことないんですよ」

事務局長島田
「絵に自信がないからこういうことするのかもしれないけど、だとしたら担当は『自信を持って!』って言うべきだよ。どのコマも顔の一部しか描かないで、全部描いてるコマはフキダシで一部隠す。まともに顔が見えるコマほとんどないでしょ。読む人間の視線から一生懸命逃げ回ってるみたいな描き方だと思う。これじゃあ、彼が持ってる何かを表現しようがないし、絵もうまくならないのでは。絵に自信がなくてもいいから、自分が言いたいことを一番ちゃんと確実に伝えられる描き方をもっと真っ当に考えるべきじゃないかな。変な逃げ方しないほうがいいと思う。たしかに読んだときに『なんか言いたいことがあるのかな』とか、『なんかおもしろいこと考えてるのかな』って思うんだけど、そこを読み取るのに疲れちゃって。絵ですごい損してると思う。『もっと自分を信じなさいよ!』ってすごく思う。まだ21でしょ、ちゃんと堂々と描けば可能性あるのかもしれないのに。話には魅力を感じただけにとてももったいない気がしました」

漫画「チクタクノジカン」愛知県 菅井直人
概 要
「断片的なイメージをつなぎあわせて作られた絵画的作品」

編集部員B
「ストーリーは全然意味がわからなかったんですけど、いろいろな絵の構図にけっこう面白いのがあったりして、これでこの人が意味のわかるものを描いたらどうなるだろうなあって興味がありますね。一枚絵とかで『ああ、いいなあ』って思うのがけっこうあって」

編集部員J
「僕は今回の若手の人たちの中では一番この人が面白いと思いました。金平糖とプールのシーンがあって、脈絡なくそのシーンに行くんですけど、そこがもう最高によくて、すごく引き込まれましたね。この世界観が、読んでてすごく気持ちよかったですね」

事務局長島田
「ちなみに一応ストーリーあるでしょ? 主人公が最後駄菓子屋になったみたいなゆるいストーリーは」

編集部員J
「ずっと子どもの頃から駄菓子屋に行ってて、最後にお話の中で僕はここにおさまりました、みたいな話だと思うんですけど」

事務局長島田
「ある種の絵のうまさとかセンスとかはもちろんあるんだろうなってすごく思うけど、そうは言ってもこのままで通用するのかな? 多くの人にわかってもらえるように固めていく必要があるのでは」

編集部員G
「それはこの人も自覚してるでしょう。『断片的でわかりやすさからはずれた絵画的な作品を描いてみた』って自分で書いてて、それをどうにか評価してほしかったってことだから」

編集部員B
「この人がわかりやすさを意識して描いたら、面白いものができるかもって思いました。絵のイメージのつながり方とかが素晴らしいんで、『もう少し一般的なお話を考えてください』って言ったら、ほんと予想外のストーリーとかが出てくるかなあって」

事務局長島田
「今、BとJが推してるわけだけど、この人はこういう世界観のこういう描き方で行くべきだと思う? それともこの人は普遍性のあるストーリーものにも可能性があると思う?」

編集部員B
「僕は普遍性のあるものを描いてもらって、そういうときにこの発想力だと、普遍性があるんだけど予想もしなかったようなストーリーが生まれるんじゃないかって思う」

編集部員J
「ぼくは全く逆なんですけど、全然ストーリーなんて重視しなくていいからこのままでもっともっと描いていくべきだと思う。それで3本くらい書くともう少し絵が固まってくるんで、そうするとこういった内容で多くの人から評価される作品になると思うんですけど」

事務局長島田
「うーん、なるほど・・・・」

漫画「片想い。」(他3)京都府 金正賢
概 要
「毎朝停留所で憧れの男性を待つ人物の独白。その人物は男性だった」

事務局長島田
「この人も若くて絵はうまいんだけど、『片想い。』なんて結局主人公がゲイだったって話でしょ。そこで終わっててギャグのつもりなんだろうけどさ、その先にもっといい物語があるんじゃないかと思うんだけど……」

編集部員I
「『片想い。』はわかったんですけど、あと3本が全然わからなかった」

事務局長島田
「わかんないよね。でもこの人絵はうまいよね」

編集部員F
「21歳にしては信じられないくらい達者」

編集部員N
「ストーリーを作らない作品が多いのは、この賞にそういう作品もOKみたいなイメージがあるからじゃない? それは必ずしも悪いことではないと思うけど」

事務局長島田
「そうですね。とりあえず好きに描いてもらって才能が感じられれば十分なわけですしね」

冊子「宇宙修学旅行のしおり」千葉県 大石ヒロタカ
概 要
「近未来、宇宙に修学旅行に行くことになったときのための旅のしおり」

副事務局長三村
「単純に面白かったですね。宇宙修学旅行に行ってみたいなと思いました」

事務局長島田
「いや、これコンセプトは面白いとは思ったけど、中身は全然つまらなかったんだけど」

副事務局長三村
「つまんないですかねえ?」

事務局長島田
「うん、今イチ・ぴんと来なかったけどなあ・・・・」

事務局員加藤
「でもこれだけくだらないことをここまで一生懸命やるってすごいと思う。その意気やよしと思ったんですけど」

事務局員島田
「いや、文字通りくだらないことを一生懸命やってしまったんでは? 意気とかコンセプトみたいなものはわかるけど、もっとひねりとかユーモアとかが欲しいよ。読んでると笑えるところがほとんどなかったし……」

事務局員加藤
「空中枕投げとか一番笑いましたけど」

事務局長島田
「そうかなあ。そんなに奇抜な発想とは思わなかったけどなあ……」

副事務局長三村
「いや、でも宇宙では技がいろいろあるんですよ(笑)」

編集部員B
「こういうパロディって今フラッシュなんかでいっぱいあるじゃないですか。こういう作品を発表するとしたら雑誌でやるには難しいでしょうからホームページ上でフラッシュとして見せたりっていう可能性はあると思う」