第18回 MANGA OPEN 選考結果発表!!
第18回 MANGA OPEN 実録2次選考会!!
以下は編集部内で行われた作品の概要と第2次選考会の模様です。2次選考では、第1次選考を通 過した40本の作品について、事務局メンバーを中心に、編集部員が参加しての議論 が交わされました。
映像「田中の物語 パイロット版」東京都 佐藤克則(FLON)
概 要
「『田中とはいったい何者なのか』田中という姓を持つ男を巡り、様々な職業の人間達の運命が交錯する。『田中の物語』という映画の予告編」

事務局長・島田
「さて、初っぱなから映像作品です。今回映像で二次まで残ったのはこの作品のみ。まあ、内容はいわば長い話の予告編的なもので評価はむつかしいんですけど……」

副事務局長三村
「でも、これを漫画に置き換えて考えれば、十分成立していると思いますよ。この先どうなるんだろうって思わせるだけのストーリーテリングは感じたもの」

編集部員(モーニングのホームページ担当)
「こういう人が漫画描いてくれれば面白いと思うけど、漫画にこだわる必要もないかもしれませんね。たとえば、モーニングのホームページで今「バガボンド」のフラッシュ(短い映画のようなもの)が流れているんですが、そういう映像を発表する場も今はあるんだし」

漫画「嫌いな奴をこらしめる50の方法」熊本県 鍬先かおり
概 要
「新社会人の中島。彼女が会社で出会ったのは、かつて彼女をからかい傷つけた中学時代の同級生男子・伊藤だった」

事務局長・島田
「わかりづらいんだけど、そこそこ引きつける構成だっただけに、中途半端なおちに、肩すかしを食らった感じがしたのがもったいなかった」

編集部員
「まあ、肩すかしなのは新人賞だし、仕方ないとして、何が言いたいのか、わからなかった。ある種のホラーなのかな? うまく描けば「不思議な味わい」になったかもしれないけど、残念ながらそうはなってない。絵はうまいとはいえないかもしれないけど、多くの人が好感はもつものだと思います」

漫画「COME BACK」神奈川県 よつもり
概 要
「売れない役者の誠。交通事故に遭い、気づくとそこは地獄。果たして誠の運命は!?」

事務局長・島田
「2ページ目のラストのコマを見たとき「お! 上手いか!?」と思ったけど、上手くなかった(笑)」

副事務局長三村
「そうそう(笑)。もう少し単純な意味での絵の上手さがあれば、という感じですね。人間の表情を描こうという意欲は感じました」

事務局長・島田
「ちなみに話は新人賞にはよくあるパターン、というか必ず1?3本は来る、こういうの。主人公が地獄へ堕ちて云々っての。ちなみに我々はこういうのを“地獄モノ”と呼んでます。新人賞ではすでにひとつのジャンルとして確立してる(笑)」

編集部員
「あと“荒野モノ”ね。荒野の彼方から主人公がやってきて、廃墟っぽい近未来の都市で暴れるやつ」

事務局員加藤
「“シルクハットもの”ってのもありましたよね」

一同爆笑
「あった、あった!」

事務局員加藤
「シルクハットかぶった狂言回しみたいのが最初に出てきて、「みなさんを不思議な世界にご招待します」っての。“シルクハットもの”や“荒野もの”はあんま見なくなったけど、“地獄モノ”はまだあるんですね」

事務局長・島田
「いつか“地獄もの”で賞とる人も見てみたい」

漫画「イガヘン」埼玉県 望月イサム
概 要
「主人公の胃が突然変に。かの伝説のギタリストが憑依したかのように、エレキギターサウンドを奏で始めたのだ!」

編集部員
「年も若いし、エネルギーを感じたので、担当になっておつきあいしてみたいと思いました」

事務局長・島田
「ワンアイデアだけだから、こういう人はもう一本見てみないとわからないとこはありますが……。まあ、次から次ぎへとこの位のアイデアが出てくるなら確かに魅力。一発アイデア勝負のものは一本だと不利ですね」

漫画「毎週・火曜日5時間目の終わりに」他 広島県 ミツイリョウヘイ
概 要
「落書きノートを置き忘れたことをきっかけに知り合った女の子に、片思いの気持ちが募っていく……。他漫画、イラスト、弾き語りのビデオ」

編集部員A
「今回の応募作の中で一番おもしろかったです。イラストもえらい描き込みでパワフルだし、漫画は言いたいことがすごくストレートに伝わって来るし」

編集部員B
「この人はムチャクチャすごい人だと思う。漫画だけじゃなく、イラスト、音楽も送ってきてるけど、ほとばしる表現欲求を感じる。ムチャクチャ担当したい!」

事務局長・島田
「若い人がその人の日常生活を等身大に描く。こういう作品は新人賞には圧倒的に多いけど、この人が他の人と明らかに違うのは、明るいこと。青春時代なんてそんなものだけど、要するにこの手の応募作の大半は悶々と悩んでいるだけの話なんだよね。だから新人賞ってけっこう暗い作品も多い。でも、この人、語り口が明るいんです。語り口ってのはその人の天性のもので、この人は何を描いてもきっと明るくなる。それってすごい才能だと思いますよ」

編集部員C
「小説だと、一人語りの妄想のおもしろさを見せるものがあるけれど、漫画だと一人語りで読める作品はあんまりない気がします。でもこの人は、一人語りのまま、すごいものを生み出せるのではないか?」

編集部員D
「うん、たしかにこの人はあんま編集者が余計な口出しすべきじゃないと思いますね。しかしこの人、漢字の間違い多いよねえ?、勉強していないこと丸わかりだよ(笑)」

事務局長・島田
「ビデオも送ってきてるんです。一人でカメラに向かって自己紹介して、延々ギターひいて自分でつくった歌を歌いまくるんだけど、まったく面白くないんだ、これが(笑)。でも、見てるとなぜか人物にはすごく好感をもっちゃうよね」

副事務局長三村
「うん、自分のことが大好きだっていう感じが、とても気持ちがいいです」

事務局員加藤
「でも、そんなこと評価に反映させていいのか……(苦笑)

編集部員E
「内省的な新人はすごく多いけど、この人は自己顕示欲が強くて、いい意味ですごい“バカ“だと思いますね。一種のバカじゃないとここまで必死で描けないよ。めちゃくちゃ才能感じる」

漫画「キツネ山の宝」福岡県 吉川モグラ
概 要
「舞台は山の洞窟。つっちん、ヨシやん、キー坊の仲良し3人組の成長物語」

編集部員A
「ドラマとしては中途半端だけど、ところどころの構図がすごく大胆なところは評価できますよ。それと小学生の男の子のアホさ加減がよく描けていると思いました」

編集部員B
「この人、漫画の描き方は全然知らないんだろうと思うけど、それでよく40Pも描いたなと感心しました。わかりにくいんだけど、伏線なんかの演出効果を20歳なりによく計算して描いてますよ。ラストで、ああこの漫画って実は“穴”が主人公だったんだということがわかったときはちょっと感動したもの。構図・アングルがすごく変わっているし、才能を感じる」

漫画「手紙?LETTER?」他 神奈川県 鼻毛山真一
概 要
「主人公が書いている手紙。それは10年後の自分に宛てたものだった。そして10年後・・・」

事務局長・島田
「ショートギャグのほうは面白くなかったけど、「手紙」は個人的には好きだなあ」

事務局員加藤
「ほかの人はあんまり評価してないみたいですよ」

事務局長・島田
「でもこれ、前後編になってて、前編で主人公が誰かに手紙を書いてて、それが10年後の自分にあててたんだってのが前編の最後にわかるんだよね。ちょっと凝った工夫だけど、それがとってもわかりやすく描かれててさ…」

事務局員加藤
「この程度の構成なら、誰でもわかりやすく描けますよ。あんたはわかりやすいだけで点甘くつける傾向強すぎ」

事務局長・島田
「うーん……。でも、後編の明るい展開にも魅力を感じたんだが…。初めて出てくる主人公のアップ、悪くなかったと俺は思うがなあ……」

「美しき友情」他 東京都 鴉忌
概 要
「ある日、プニたんは親友のナっちゃんに、衝撃の告白をする! 他漫画、イラスト」

編集部員A
「なんかわかんない世界観なんだけど、登場人物のせつなさが伝わってきた。もしこの人の同人誌が売ってたら僕は買いますね」

編集部員B
「「アフタヌーン」向きな感じはしたけどね」

編集部員A
「でも、この妄想をこのまま伸ばしていけばいいんじゃないかと思いますけど」

編集部員C
「編集長もけっこう評価してましたよね(編集部注 モーニング編集長は去年までアフタヌーン編集長をやってました)」

編集長
「17歳でこれだけ描けるっていうのはなかなかのことだね。絵の力はあるし、少ないページの中で、きっちりとファンタジーの王道を抑えている。ページ数が少ないなかでこれだけ描けるってことは、描けるってことだと思う。短くてこれだけ描けりゃ、長いものはもっと描けるよ」

事務局長・島田
「なるほど。 新人賞だと長いものを描いて力を見せようとする人も多いけど、短いものでも力は見せられるってことですね 」

編集部員A
「でも今回、こういう人が何でもありってことで、オープンに応募してきてくれたのはうれしいことこのうえないですよね。「B4のいわゆる漫画原稿用紙に漫画を描くのが苦手で今まで賞に応募しなかった」ってことで、B4のルーズリーフに描いているけど、オープンならこれでもありなわけだから」

漫画「フカヅメ」広島県 湯冷八本指
概 要
「ちょっとずれてる人達が主役のショートギャグ4本」

事務局長・島田
「そこはかとないおもしろさはすごくあったと思うんですが…。さりげない人物の表情や雰囲気がすごくよかったです」

編集部員
「この人はかれこれ十年以上のキャリアのあるプロの方。わたしも知ってます。コアなファンがいる人ですよ」

原作「リンク」埼玉県 えんどうとしや
概 要
「アイスホッケーを題材にした原作」

事務局長・島田
「今回、原作・原案が90本から来た中で、私はこれに一番可能性を感じました。「この人にしか書けない」って原作が少なかった中で、これは体育会にいた人間じゃないと書けないものだし、体育会というテーマがすごくおもしろいと思った。日本独特のテーマですしね。このテーマを掘り下げていけば何かあるんじゃないかなあ」

編集部員A
「ええ? はっきりいって全然買わないなあ。あらすじのおもしろさにひかれて読んだけれど、あらすじに描かれているテーマが見えてこなかった。それとやっぱり知識とストーリーテリングというのは一人の人間の中ではなかなか両立しないんだなとあらためて思いましたよ。」

事務局長・島田
「たしかに具体的なストーリー展開やキャラクターはまだまだで「原作」というほどのレベルではないけど、「原案」としてならどうかなあ。基本設定やテーマは可能性があるのでは…。目のつけどころはいいと思う……」

編集部員B
「体育会ってアイデアは出てるけど、つっこみが浅いですよ。これじゃテーマといえない」

原作「軍資金ゼロで球団を作る方法」東京都 鈴木直明
概 要
「軍資金ゼロで球団を作る方法」

編集部員
「独特のかたちでわかりやすく世界観の提示があり、アイデアの表現の仕方としておもしろいと思いました。実際に球団を作る方法をシミュレーションしてるんだけど、可能性があるかなと思った。あと○○○○○○(作中に出てくる球団の名。作者の希望で名を秘す)の応援歌が気に入った(笑)。あと、かわぐちさん、さだやすさん、お二方とも広島ファンだし、最終選考でぜひお見せしたい(笑)」

事務局長・島田
「これを原作というかどうかはともかく、原作ってのは別にストーリーにしなくてもいいんだよってことだね」

事務局員加藤
「これだけアイデアをバシバシ出してくるのはすごいんですけど……、結構豪腕編集者じゃないと担当するの大変そう……(笑)。細かーい字でぜんっぶびっしり手書きなんだもの。それで職業不動産屋さんでしょ。なんかすごく押しが強そう。ま、得てして才能ある人は押し強いですけど(笑)」

事務局長・島田
「余談だけど、今回、原作原案応募者にはなぜか不動産屋の人が多かったなあ」

イラスト・詩「牛のヨーデル」鹿児島県 永谷勝
概 要
「枯渇しかかった地球資源。各国首脳は、都市機能一斉停止の条約を締結した」

事務局長・島田
「葉書大のカラーイラストに詩がついてるんだね。「駒は飼葉を残らず喰らい、藁に寝息を立てる午後」「スローテンポで陸から海に歩む甲羅に白い月」「篭に戻らず食う寝る遊ぶ、雌のインコはいつも高揚(ハイ)」。こういうのがなんと100枚。楽しんで拝見しました。でも、惜しいのはイラストのオリジナリティがもう一歩なんです。惜しい!」

漫画「東京から光が消える日」群馬県 吉村雅
概 要
「枯渇しかかった地球資源。各国首脳は、都市機能一斉停止の条約を締結した」

事務局長・島田
「19歳。若いです。冷やかしでなく、きちんと漫画を描いてみようという姿勢は買いますが、絵、ストーリー、その他すべてまだまだ。でも、言い換えれば全てに伸びる余地があるということです。とにかくたくさん漫画を見て、いろんな絵柄を試すってとこから入ってほしい」

編集部員B
「やっぱりたくさん漫画を読むのは大事ですよね」

事務局長・島田
「そりゃそうだよ。最近「漫画あんま読みません」って作家志望の人多いけど、はっきりいってすごく損してる。これだけ漫画のバラエティがあって、技術が進歩してるんだから、あんまり取り残されたことやってたらいくら新人でも相手されないですよ。自分のオリジナリティがどうこういうのは全然別の話です」

漫画「無題」東京都 中島稀子
概 要
「青森から都内の進学校へ転校してきた主人公が、周りを巻き込んでバンドを始める」

事務局長・島田
「絵も話も上手いと思いました。でも、漫画って基本的にはすごく主観的な表現方法で、つまり読んでる人をのめり込まさせないとダメだと思う。この人のは全てがちょっと淡々としてる感じがしました。それも持ち味なんですけど、こういう女子高生が周りを巻き込んでバンドをやって…みたいな話には不向きだったかも。題材と才能がちょっと合わなかったというか」

漫画「鼻ちょうちんプー」兵庫県 逆立ち和尚
概 要
「噺家を目指して修行中の主人公。しかし彼には足りないものがあった」

事務局長・島田
「構成はきちんとしていて、起承転結がちゃんとしてる。でも、あまりにご都合主義。この師匠がなんでこんなにこの主人公に目をかけてるのかよくわからない。人物の配置も性格づけも「方程式」にあてはめて作ってる感じ。自分の内側を見つめて、自分自身の肉声をつかんで欲しいです。俺はどうしてもこれを描かずにいられないんだ!!! というようなものを」

漫画「暗いデパート」神奈川県 首藤大樹
概 要
「女性不信の主人公は、ある日、デパートの化粧品売場で、一人の女性と出会う」

事務局長・島田
「「鼻ちょうちんプー」の人と同じで、内側から沸き上がるものを感じなかったと思う。そういうものはあるのかもしれませんが、うまく伝わってこない。主人公が女性嫌いなんだけど、その設定がオチのためにつくられた設定としか思えない。はじめにオチありきというか。それでもいいんだけど、だったらその女性嫌いの主人公の感情・心情に作者が死にものぐるいで猛烈にシンクロしないと。 まだ17歳で非常に若い新人さんなんだけど、漫画家って多分、役者ととても近い職業なんだと思う。役者も役作りっていって、その役を理解して、その役になりきろうとするでしょ。この話はまず、主人公の役作りが出来てないと思いました。」

漫画「ヒトシとリュウ SENDAI BOY’S」福島県 坂本竜也
概 要
「「仙台」をネタにした4コマショートギャグ」

事務局長・島田
「仙台ご当地ものの4コマだね」

編集部員
「2人のよたったキャラはちょっと面白かったんだけど、肝心のギャグが…」

漫画「mine」埼玉県 橋本祐介
概 要
「同じ高校に通う京子と明美は大の親友。しかし、明美が男の子と付き合うことにより、ふたりの関係は変化していく」

事務局長・島田
「随分荒いけど、どれくらい描いてる人なのかな?」

編集部員
「略歴見ると、2年くらいは描いてそうですね」

事務局長・島田
「うまくなる可能性は十分ある人だと思うけど、まず細かいとこにもう少し気をつかわないと。映画館のシーンなんて、座ってるのが椅子に全然見えない」

編集部員
「どこかでアシスタントに入れば飛躍的に上手くなりますよね、こういう人は。でも、“アシスタントもしてみたいけど、土日しか出来ない”って書いてあるからむつかしいなあ」

事務局長・島田
「とりあえずは自分でどんどん描いていくしかないんだろうけど、ひとつひとつのシーンの見せ方にも工夫の余地が多いにあると思う。単純にいって、どのコマを大きくするのが効果的か、とか、どんなアングルで、どんな表情で描くのが効果的か、とか。明美が「落ちる」とこの24,25ページはそれなりに構成されてるけど、そこへの直接の導入部となる21〜23の構成が雑だから24,25が生きてこなかった」

漫画「Sunsmumrik」他 埼玉県 斉藤弘朗
概 要
「それぞれスポーツと音楽を題材にした青春物語2編」

編集部員
「話はさわやかで好感もてたけど、アングルに凝りすぎじゃないですか?」

事務局長・島田
「確かに。顔がコマの中でやたらに切れてて、目だけとか、口元だけとか描かれてる。肝心の決めコマではしっかり顔が描かれているので、計算してのことだろうけど、うーん。」

編集部員
「こういうのってむつかしいですよね。これが個性であり、こういうのが好きなんだって言われたらそれまでで、実際こういう手法のプロの方、いますからね。悪いとも言い切れない…」

事務局長・島田
「でも、それが主な原因でとてもよみづらく感じてしまったのも事実」

漫画「何かが道をやってくる」埼玉県 桜庭浩二
概 要
「田舎に住むSFオタクの主人公の元に、一人の女性旅行者がやってきた」

編集部員A
「これは最後の救いのなさがすごくよかった」

編集部員B
「でもこれ話がすごくしょぼくなかったですか?」

編集部員A
「そのしょぼいところがいいんだよ。原稿用紙古いし」

編集部員B
「元「群像」の編集者は妙なとこで感心するな…」

編集部員C
「どっかですごく長くアシスタントをやっている感じがしますね」

副事務局長三村
「最後のオチにはほんと見事にだまされた」

A、B、C
「そうかあ?(笑)」

編集部員D
「いや、ラストどれくらい成功したかはともかく、途中のストーリーテリングはしっかりしてましたよ」

漫画「光る石」他 東京都 下倉つよし
概 要
「小さな兄弟は、起爆性のある鉱石の原石を持ち帰るため坑道へと赴く」

編集部員A
「この人はぼくが以前から担当です。99年にオープンで奨励賞をとったんですが、ながらく連絡がなくなっていて、最近また漫画を描きたいと言ってこの原稿を見せにきました。みなさんの評価をお聞かせください」

事務局長・島田
「うーん……、プラスマイナスどちらでもない。印象に残らなかったなあ」

編集部員B
「この作品、コマ割りがすごく読みにくくなかったですか? 単純にコマ数が多すぎるんだと思います」

事務局長・島田
「それはそうなんだけど、ヒトコマヒトコマをみるとうまいよ。丹念に人物の表情を追っている。」

編集部員A
「完成度を見るとこの応募作の中では確かに上位でしょう」

漫画「地獄太夫と白昼夢」神奈川県 鈴木綾
概 要
「ソープ嬢の揚巻が人生に迷うとき、「地獄太夫」という謎の女が現れる」

新人編集部員
「ぼくはこの人の世界観にすごくひきつけられました。話もすごくシンプルだし」

副事務局長三村
「話がシンプルだって言うけど、どこがシンプルなの? 俺はこの話、まったくわからなかったよ。

新人編集部員
「(ストーリーを説明)」

副事務局長三村
「そんなことはわかってるんだよ。それで地獄太夫ってのは一体何なの?」

新人編集部員
水商売的なかっこよさを体現している存在なんだと思います」

編集部員A
「話がわかりづらいのは、自分に都合のいい絵しか描いてないからじゃないかな。“描きづらいコマ”を飛ばしてつないでるから、ただイラストが並んでいるだけみたいに見える。」

編集部員B
「そっか。しかし、わかりづらいとはいいながらも魅力を感じさせるのは確かで、(点数表と見ながら)高いポイントをつけてる人多いですね。表現の仕方はつたないけど、表現したい何物かは強くあるわけですね。結局はそれがあるか否かが一番重要ですからね」

漫画「HEAT」富山県 松居優
概 要
「大学に入って無為な日々を過ごしていた主人公が、かつてやっていたバスケの面白さに再び目覚める」

事務局員加藤
「この人はぼくが担当なんですけど、ネーム見てません。いきなりこれを送ってきました」

編集部員A
「あ、加藤担当なんだ、この人にすごく興味あるんだけど」

編集部員B
「この人、前も似た話応募してきたよね」

事務局員加藤
「はい、前の作品の焼き直しですね」

編集部員C
「ああ、あの吹き出しの中にむちゃくちゃ小さい文字でセリフ入れてた人か」

事務局長・島田
「でお前としてはこの作品はどうなの?」

事務局員加藤
「セリフは大きくなったかなと。ただ作品のほうは前とほとんどかわってないですからね。ネームを見せてほしかった……」

事務局長・島田
「つまりお前はこの人に嫌われたわけだな(一同爆笑)。どうする、担当続けたい?」

事務局員加藤
「……はい……」

事務局長・島田
「しかし内容が変わってないんじゃなあ……」

事務局員加藤
「…………」

1コマ漫画「ポエム」愛知県 大ハシ正ヤ
概 要
「ポエム(?)が添えられた1コマ漫画多数」

事務局長・島田
「問答無用でおもしろかった! みんなも高いポイントつけてるね。これだけたくさん描いてきて、打率も相当。ほとんどは笑えました」

編集部員A
「この1コマネタだけでは成立しないと思うので、もし私が担当になれたら、ごく普通に四コマをやってみませんかと提案したい」

編集部員B
「いや、4コマにはしないほうがいいと思う。このまま目次の横とかモーニングフォーラムに載っければ、毎週楽しみなページになるんじゃないかなあ」

編集部員C
「いや、これはみんなそれぞれに受けるツボが違うと思うから、毎週一枚づつとか見せられてもインパクトがないと思う。」

編集部員D
「40本くらい見開きで一気に載せるとかどう?」

漫画本「追悼 反木田仁徳」東京都 宮田靖
概 要
「「反木田仁徳」というキャラクターの追悼単行本。漫画やコラムなどが一冊に」

事務局長・島田
「この人も表現欲が買いだよね。絵もセンスも相当子どもっぽいけど、これだけの熱があれば何かできるんじゃないかなあ」

副事務局長三村
「しかしこれ、ほんとおもしろくないですよねえ」

事務局長・島田
「そうかなあ」

編集部員A
「おもしろくないものに自分で解説をつけているのがすごいよね」

事務局長・島田
「だめかねえ……」

編集部員B
「一冊の本を作るなんてこの人もたしかに表現欲求があるんだけど、「毎週火曜日5時間目の終わりに」の人と決定的に違うのは、あの人は陽性だけどこの人はそうじゃないんですよ」

漫画「21世紀画家志望」大阪府 川野優樹
概 要
「女の子の家に居候しながら画家を目指す主人公の成長物語」 

事務局長・島田
「これはさっきも話に出た「毎週火曜、5時間目の終わりに」と同じぐらい面白いと思いましたけどね。女の子にすごく存在感がある、これはたぶんモデルがいるのかなあ」

事務局員加藤
「これは…タイトルがすごくいい…と思いませんか。身の回りのことを描いている小さな話なのに、タイトルのスケールがすごく大きいというギャップがなんというか…」

編集部員A
「この作者が男か女かわからなかった」

事務局員小松
「たぶん男性だと思います」

編集部員A
「男なんだ、女の視点からのほうがよく描けていると思ったけど」

事務局加藤
「これは多分実体験にもとづいているんじゃないかと」

事務局長・島田
「個性的な、または自分がすごく思い入れのある人がモデルとしていると確かに描きやすくはなるんでしょうが、モデルがいようがいまいが、まだ20歳だしすごく可能性を感じますね」

編集部員B
「今回の二次選考は20代の人がすごく多いけど、これは意識的に残したの?」

副事務局長三村
「そういう部分も正直多少あります。まあ、若い人からの応募自体が多かったことが大きいですけど、若いっていうのはそれだけでひとつの可能性ではありますから。すごく荒削りでも、若いなら将来性を買ってってことは正直あります」

漫画「ガッシェ」東京都 坂本ジョン
概 要
「(多分)ある時期のゴッホを題材にした漫画」

事務局員加藤
「作品の内容はまったくわかりませんでしたけど、ぼくはこの作品にすごいエネルギーを感じました」

編集部員A
「これはほとんどゴッホの模写ですね」

編集部員B
「ものすごいゴッホおたくだね」

事務局長・島田
「しかしこれのどこにエネルギーを感じたのかさっぱりわからん。お前、エネルギーを感じるところを間違ってるよ」

事務局員加藤
「…………」

漫画「海辺の迷路」大阪府 水押汽船
概 要
「死んだ兄の元恋人と、主人公のひと夏の交流」

新人編集部員
「ぼくはこれはすごく面白かったです。とても読みやすかったし」

事務局長・島田
「俺はこの作品はすごくわかりにくかったけどなあ。「地獄太夫と白昼夢」もそうだったけど、お前にはずば抜けた読解力があるのかもしれないなあ(一同爆笑)。そういう応募作はかなり多いんだけど、構成に凝りすぎですよ。複雑な構成で効果を出すなんてことは、プロが考えるべきことで、もっと地道に人物描写やテーマで見せてほしい。見るべきものさえあれば、どんなに愚直な見せ方でも、ちゃんと評価しますから。」

編集部員B
「映画のようにフラッシュバックを多用したりとか、そういうのを漫画でやるのはすごくテクニックがいる。映画と漫画はそりゃ似たとこもあるけど、根本的には全く性質の違う表現形態です。闇雲に映画を参考にするのはかなり危険」

漫画「人心絵師」東京都 木夢
概 要
「謎の絵描き。彼は、人の内面の姿を描くことができた」

編集部員A
「話はそんなにおもしろくないと思ったが、最後の一枚にすごく感動した。絵が魅力的、19歳だからまだまだこれから伸びて行くと思う」

編集部員B
「絵は気持ちわるいなあと思って読んだけど、プロフィール見たら、ホラー漫画家志望って描いてあったから、自分のことをよくわかっているなあと思いましたね」

副事務局長三村
「うん。自分の目指す方向の作品がきちっと描けていると思いました。ホラーであっても人間をシンプルに肯定的にとらえようとしている。10代にしてすごく素直な感覚をもっていると思う。若いうちって意外とひねくれたこと考えちゃうもんだけど、この人はメジャー感がある気がした」

事務局長・島田
「読んで、すごくわかりやすかったよね」

編集部員B
「話がわかりやすいのはよくある話だからじゃないですか」

事務局長・島田
「それだけじゃないと思うけどね。よくある話なのにわかりづらいっての、たくさんありましたよ。わかりやすく描くって何より大事でしょう。ストーリーそのものはありふれてても、その底に流れてるものが魅力的なら面白く感じるわけですよ。でも、これがストーリーがありきたりなのを気にして、変にわかりづらくしたら、その魅力すら伝わって来なくなるかもしれない」

編集部員A
「本人はホラー志望っていってるけど、まだそう決めちゃうのは早いかもしれないと思います」

漫画「魚道メルヘン」山梨県 入月裕美子
概 要
「溺死した川の魚道にとどまり続ける男。ついに天に召される前夜、男はナマズと語り合う」

編集部員A
「ほのぼのとした絵柄で死後の世界を描いている、浄土真宗のパンフレットみたいにも見えるけど」

副事務局長三村
「読後感がすごくいいですよね」

編集部員B
「すごく目にやさしい絵で寂しさが伝わってきましたこの人が生きるということについて考えていることがすごく上等なことを考えている感じがしました」

漫画「赫い手のグッピー」東京都 須齋英和
概 要
「赤い毒の手を持つ少年の壮絶な生と死」

編集部員A
「長いけれど最後までズズズズッと読めた。描き方次第ではいい話になるだとうと思います」

副事務局長三村
「決めゴマが小さかったりしてよく読まないとわからないところも多いんだけど、物語の内容としては今回ダントツだと思う。言っていることが「一方通行」になっていないというか、だから読みづらいんだけど、思いの強さを表現するのにすごく真っ向から体当たりしてると思いました」

編集部員A
「この読みにくいコマ割りを変えていくことができるかですよね」

事務局長・島田
「「奇想」にあふれてる作品だね。グロテスクなんだけど、人間に対する肯定観がベースにあることで、嫌悪感をギリギリいだかせない」

ドラマCD「Love is Blue」東京都 八代眞奈美
概 要
「女性の性欲をテーマにした、音によるドラマ」

事務局長・島田
「オープンならではの作品なので、みんなの評価を聞きたいと思って残しましたけど、何かありますか?」

編集部員A
「新人の女性映画監督が短編映画をとっている感じがした。モノローグで女性だけの視点で構成していて、男は道具。そして最後に男が反抗するみたいな。表現形式は特殊だけど、漫画で描いたら16ページの何ということもない話になってしまうのでは」

編集部員B
「オチがイマイチなのが残念でした。でも、この声優さんには会ってみたいと思いました。」

事務局長・島田
「このアニおた!(笑)」

漫画「メモローグ」東京都 前田歩
概 要
「優等生の主人公に接近してきたのは、ちょっとおバカで可愛い女の子」

編集部員A
「僕が持ち込みを受け、本人の了承をとってオープンに応募しました。そのまま担当希望します。ハンディキャップを負った主人公を描いて行きたいという人です。それにこだわらずにいろいろ描いてもらいたい。電車のシーンとか読んでいてせつなくなりました。」

事務局長・島田
「記憶障害ものって最近多いよね」

編集部員B
「でもこの主人公って記憶障害なのかどうかよくわからない。記憶障害にしては都合が良すぎる展開なんですよ。矛盾がある」

事務局長・島田
「このアニおた!(笑)」

漫画「叩っ斬れ」兵庫県 長谷川和志
概 要
「幕末の薩摩藩を舞台にした歴史漫画」

編集部員A
「こんだけ井上雄彦さんのマネをしているのがすごくいじらしい。時代劇描いて来る新人さん多くて、ほとんど時代考証めちゃくちゃだけど、この人は刀の柄とか細かいとこまできちんと描けています。それと鹿児島弁が徹底しているところもよかったし、今回これが一番面白かった。まあ、私が幕末好きというのもありますけど」

編集長
「でもキャラクターはうまくないけどなあ。」

「メラマソ!」愛知県 山内雄矢
概 要
「顔がソラマメな主人公の巻き起こす大騒動。学園ギャグ」

編集部員A
「新人賞にはとにかくぼけを重ねてわけわかんなくなってるギャグ漫画がよくあるんだけど、この人は主人公だけにぼけ倒させて、あとはツッコミにしているというところがすごくうまいと思った」

編集部員B
「これだけくり返されると圧倒されますよね。普通だったらどこかで自分のやってることに疑問を感じたりすると思うけど、最後までこのパターンで描ききるところがすごいですよね」

新人編集部員
「ぼくも担当希望したいです」

漫画「スクープ」東京都 タナカ アキラ
概 要
「週刊誌の新人記者がスクープを求めて日夜奮闘!」

副事務局長三村
「絵柄にはすごく読みにくさを感じました。コマ割りが細かかったりして。ただ打ち合わせをしながらものをつくっていけるタイプの人のような感じがしました」

事務局長・島田
「少年誌で自分の描きたいテーマが描けないという制約があったとか言うけど、制約のあるなしの問題かなあ。テーマの根本的なとらえ方や人間観に疑問を感じてしまった」

キーボード他「巨人のイタチョコの星のシステム」東京都 イタチョコ=ラショウ
事務局長・島田
「えーと、これはなんというか…“オリジナルのキーボード”ですね」

編集部員
「本、DVD、ゲームまでいろいろ送っていただきました。どれも楽しいんだけど、なんというか…」

事務局長・島田
「モーニングがこの人にどういう発表の場を提供できるか、したいか、この中の誰かがそれを漠然とでも想像できるかだね…」

切り絵漫画「切り絵ざんまい。」北海道 梅吉
概 要
「文字も絵も切って作った切り絵漫画」

編集部員
「この人のすごさは原稿見なきゃわからないよ。印刷したらすごさが伝わらないんじゃないですか? でも、こうして実物見るとすごいよ。全部つながってるんだもの」

事務局長・島田
「字を切る方が大変なのかも知れないなけど、大変なとこ見せつけなくていいから、もっと絵を切ってもらいたい。切り絵というと民芸タッチやメルヘンタッチなものが多いけど、この人のはどちらでもないちょっとユニークなもの。切り絵そのものは実は以前のオープン(編集部注 第一回以降数回にわたり、かつてのオープンも、現在ほど完全な「なんでもあり」ではないが、かなり自由な応募規定だった)ではたまに送られてきていて、そう目新しいものではないんですが、この作品には単なる切り絵の珍しさを超える可能性もちょっとだけ感じます」

漫画「幸せへと続く道」東京都 奈良篤志
概 要
「漫画のアシスタントをしている主人公の恋と成長の物語」

副事務局長三村
「20ページという短いページでまとめようとしたことは評価したいけど、内容があまりにありきたりです。しかも導入は恋愛ものなんだけど、そこがドラマになっていない」

事務局長・島田
「主人公が「変わりたい」と強く思ってるはずなんだけど、何がどう変わったのか分からない。作者が主人公の内面を捉えようと苦闘した跡みたいなものが見られないから、物語についていけない。結局新人賞取りました、というだけの話になっていて、それでは面白くなりようがない。描きたいものを本気で見つけるべき」

事務局長・島田
「さて、以上が一次選考通過作品40本です。ではこれから二次通過作品を決めるための投票に入ります……」